京都大学は2019年5月28日、ガラスの結晶化技術を用いた新規白色LED用蛍光体の開発に成功したと発表した。この蛍光体は現在普及している蛍光体より演色性が高く、高耐熱性でハイパワー光源への適用が可能な材料の開発が期待されるという。
白色LEDは、青色光や紫外光を発するLEDと、青色光や紫外光を吸収して可視光を放つ蛍光体結晶粒子の組み合わせで白色を得ている。現在普及している白色LEDは蛍光体が放つ光の成分にオレンジ色が不足しているため、青白く冷たい光を放つものが多い。
これまで、暖色の白色LEDの作成を試みた研究が数多くなされており、現在使われている黄色蛍光体結晶にオレンジ色を放つ蛍光体結晶を混ぜる研究では実用化もされている。しかし、1)混合の不均一さが色ムラにつながる、2)成形する段階で使用する有機樹脂バインダーが使用とともに劣化するという2つの問題があった。
今回京都大学の研究グループは、ガラス中にオレンジ色と青~緑色に発光する2種類の蛍光体結晶を均一に析出する技術を開発することで、これらの問題を解決した。研究グループは、ガラスの成形性と結晶の機能性を併せ持つ材料として多くの研究開発例がある結晶化ガラスに注目。特にユウロピウム(Eu)イオンを含む蛍光体結晶粒子を含む結晶化ガラスに着目した。
Euイオンには2価(Eu2+)と3価(Eu3+)の2種類の状態があり、それぞれ主に青~緑色、オレンジ~赤色に光るため、2種類のイオンを含む結晶粒子を適切な比で混ぜることで白色が得られる。しかし、結晶中での安定性の違いからEu2+とEu3+の両方を1種類の結晶に含ませて望む濃度比を得るのは簡単ではなく、結晶中のEuの価数制御で白色の発光にすることはこれまで困難だった。
これに対し研究グループは原料組成を工夫し、更に結晶化を制御することで2種類の結晶をガラス内に析出させ、Eu2+とEu3+をそれぞれ別の結晶に取り込むことに成功した。Eu2+は酸化物結晶(NaAlSiO4)に、Eu3+はフッ化物結晶(Na5Gd9F32)に取り込まれ、それぞれ青~緑色とオレンジ色を放つことで暖かみのある白色が得られる。両結晶はマイクロメートルのスケールで均一に析出しており、色ムラは解消。さらに窓ガラスやフロントガラスと同様に結晶化ガラスは様々な形に成形可能なため、従来のような有機樹脂バインダーは不要となり、劣化の問題も解決した。
今回開発した結晶化ガラスは、励起紫外光を白色に変換する効率が、市販されている蛍光体より低い。このため、十分明るい白色を得るためには、厚さが2mm程度の分厚い結晶化ガラスが必要だ。今後研究グループは、原料組成をさらに工夫し、100μm以下と薄くても明るい白色が得られる効率の良い結晶化ガラスの開発を目指す。