蛍光体粒子分散セラミックスを常温で高密度化――次世代高出力半導体照明用に資する高熱伝導率化と透光性も付与 横国大ら

横浜国立大学は2019年10月10日、神奈川県立産業技術総合研究所と共同で、常温での緻密化プロセスにより、従来の樹脂を用いたものと比較して40倍以上も高い熱伝導率を有する蛍光体粒子分散酸化マグネシウムセラミックスの開発に成功したと発表した。

一般照明の白色LEDへの代替と同様に、高出力照明でも半導体照明への置換が求められている。従来の白色LEDでは蛍光体粒子を樹脂やガラスに分散させた波長変換部材に青色LEDの光を当て白色の光を得ているが、耐熱性と熱伝導率については樹脂を用いた部材の熱伝導率が0.1~0.2W/mK、ガラスを用いた場合でも0.5~1W/mKと低いため、高出力半導体照明では波長変換部材の温度が上昇して部材の変形や割れが生じたり、発光効率が低下したりするなどの問題が生じていた。

蛍光体粒子を固定化させる母相を、本質的に耐熱性と熱伝導率が高いセラミックスに変えると、上記の課題を解決できる可能性がある。一般的に高い熱伝導率を有するセラミックスを作製するためには、高温での焼成により熱伝導を阻害する気孔を除去して緻密化することが必要となる。しかし、このような高温焼成を行うと添加した蛍光体が劣化したり消失したりするため、可能な限り低温で緻密化させることが強く求められていた。

今回の実験では、蛍光体粒子と混合した酸化マグネシウム粉体を予備成形し、これに少量の水を添加した後、成形体に静水圧を印加することで高密度の蛍光体粒子分散セラミックスが得られた。従来のセラミックス製造に不可欠だった高温での焼成を全く行わないにも関わらず、高密度かつ樹脂やガラスでは実現できない8W/mKという高い熱伝導率を有する。常温プロセスのため省エネ、かつ用いる蛍光体粒子が全く劣化しないため色調の制御も容易だ。

今回開発された材料は、常温での緻密化による省エネ効果だけでなく、蛍光体を選ばず緻密で高い耐熱性と熱伝導率を有することから、レーザーなどの高出力な励起光源を利用した次世代半導体照明の波長可変部材としての応用が期待できるとしている。

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