- 2020-3-28
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- Nature, Thomas Mueller, ウィーン工科大学, ニューラルネットワーク, 二セレン化タングステン, 学術, 機械学習アルゴリズム, 超高速イメージセンサー
オーストリアのウィーン工科大学は、2020年3月5日、ニューラルネットワークを搭載し、ナノ秒で画像認識する超高速イメージセンサーを開発したと発表した。研究成果は、『Nature』誌において2020年3月4日付で発表されている。
通常、視覚情報は、フレーム単位で撮影するカメラで記録された画像データがデジタル形式に変換され、人工ニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズムを使用して処理されている。しかし、この方法では時間がかかるという問題がある。特に、毎秒記録される画像の数が多くなると大量のデータ処理が必要となり、その結果、フレームレートが低くなり消費電力も大きくなるといった課題がある。
処理速度改善のために、研究者らは、特定の対象物を認識するようトレーニングできるイメージセンサーを開発した。そのチップには学習可能な人工ニューラルネットワークを配しており、チップ自体がセンサーで捉えている対象物を即座に認識処理する。つまり、コンピューターでデータを読み込んで処理する必要がなく、チップ上で即座にデータ処理し数ナノ秒以内で対象物の認識ができるという。
研究者らが開発製造したチップは、原子層が3層しかない極薄膜材料である二セレン化タングステンから成る光検出器がベースだ。
「通常、画像データはピクセルごとに読み込まれてから、コンピューターで処理されるのですが、私たちは、ニューラルネットワークとその人工知能とをイメージセンサーハードウェアに直接統合しました。そうすることで、対象物の認識速度を大幅に高速化したのです」とThomas Mueller教授は語る。
開発されたチップでは、外部のコンピュータープログラムによって検出素子の感度を個別に調整できる。光検出器の電界を局所的に調整し、イメージセンサーが対象物を正確に認識できるようになるまで調整を繰り返して学習させる。
この学習プロセスが完了すればコンピューターは不要となり、ニューラルネットワークは単独で動作できる。特定の文字をセンサーに示すと、50ナノ秒以内にトレーニングされた出力信号を生成するという。
今回開発されたテスト用チップのサイズは小さいが、目的に応じて拡張することは容易だとMueller教授は述べている。特に、高速情報処理が必要とされる分野への応用が期待でき、破壊力学や素粒子物理学など利用できる分野は多いようだ。全てのデータを保存する必要はなく、瞬間的な認識、例えば、亀裂が左から右に発生したのかどうかといった現象の確認に適するとしている。