NTNは2021年5月24日、水素が原因の軸受破損を抑制する「耐水素脆性軸受」を開発したと発表した。
自動車分野では電動化などを背景として、動力伝達装置のさらなる高効率化が求められている。その結果、装置内の潤滑油量の低減や低粘度油化などが進み、それが軸受に対する潤滑環境を過酷なものにしている。過酷な使用条件下では、水素原子が鋼材に侵入することで強度が低下する「水素脆性」が強度低下の原因とされており、その対策が求められていた。
今回開発した耐水素脆性軸受では、新たに開発した鋼材を採用。同鋼材は軸受の軌道面表層に硬質かつ微細な金属化合物が多数分散しているために、希薄な潤滑条件での金属接触でも摩耗しにくい性質を持つ。これにより水素原子の発生源となる金属新生面の露出が抑えられる。さらに、水素原子が発生しても、上記の微細な金属化合物が軸受内への水素原子の侵入速度を遅らせる。
これらにより、同社従来品と比較して製品寿命が3倍以上拡大。さらに、特殊熱処理工程における焼き入れで、軸受軌道面の窒素濃度を高める浸窒処理を施すことで耐異物性を向上し、異物混入条件下でも長寿命化を実現した。
同製品は自動車および産業機械全般での利用用途を想定している。