屋外でも鮮明な色彩表示ができる新型「電子ペーパー」を開発

Marika Gugole/Chalmers​

スウェーデンのチャルマース工科大学とリンショーピング大学による研究チームは、屋外の日光の下でも、屋内にいるときと同じ、鮮明な画質でスクリーンの内容を視認できる新しいタイプの反射型ディスプレイ開発に成功した。この研究成果は、2021年5月10日付で『Nano Letter』に掲載されている。

従来のデジタルディスプレイではバックライトを用いているため、屋外では画像を見たり文字を読んだりするのが難しいことを、我々は皆、しばしば経験している。それに対して、「電子ペーパー」とも呼ばれている反射型ディスプレイは、紙の上の文字や絵を見るのと同様に、周りの光(環境光)を利用して画面を表示する方式のため、屋外で用いても画面が見やすい。

現在、電子ペーパーは既にいくつかのタブレット端末で実用化されている。しかし、白と黒以外の色をうまく表示できないので、使える用途が限られていた。

研究チームはこれまでに、LEDディスプレイが表示できる全ての色を再現しつつ、標準的なタブレットと比べて必要な消費エネルギーは10分の1という、省エネルギーでフレキシブルな超薄型素材の開発に成功していた。

しかし、初期のデバイスデザインでは、反射型ディスプレイの色が最適な品質で表示されなかった。今回の研究では、これまで研究してきた三酸化タングステン(WO3)、金(Au)、白金(Pt)を含む多孔質ナノ構造体を用いながら、デバイスの構造を反転させた。従来は、ガラスを一番下に配置し、色を再現する画素(ピクセル)化ナノ構造を、ガラスと電解質の間に挟むというデザインだったが、これをひっくり返す形でナノ構造の下に電解質と対極を配置した。また、従来は金の薄膜にナノホールを形成していたが、新デザインでは白金薄膜にナノホールを導入した。従来とは正反対の構造である新しいデザインにより、反射型ディスプレイを見る人は、一番上のガラスを通して画素化ナノ構造の表面を直接見ることになり、以前よりも鮮明に色が見えるようになった。

この反射型ディスプレイの利点は、環境光を利用していることからエネルギー消費がほとんどゼロであることと、通常のディスプレイに比べて目が疲れにくいことが挙げられる。また、この技術は、印刷された紙のポスターや「動く広告」のデジタルサイネージに比べて、エネルギーや資源の節約になることから、スマートフォンやタブレットだけでなく、屋外広告にも有用だ。

研究チームを率いるチャルマース工科大学のAndreas Dahlin教授は「適切な技術力を有する大企業であれば、原理的には、数カ月以内でこの新しいテクノロジーを使った製品の開発を始められる可能性がある」と述べている。

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