太陽光発電の仕組みは? メリット・デメリットや設置費用について解説

資源問題や気候変動問題への関心の高まりから、再生可能エネルギーの1つとして注目が集まっているのが太陽光発電です。現在では、住宅や工場の屋根の上、日当たりの良い遊休地や山の斜面などに太陽光パネルが並んだ光景が日常化しており、今後もさらに太陽光発電の普及拡大が見込まれています。

この記事では、そんな太陽光発電の仕組みや特徴、住宅や工場に設置するメリットやデメリット、設置費用などについて解説していきます。

太陽光発電とは?

太陽光発電とは、太陽電池を使い、太陽の光エネルギーを電気に変換する発電方法のことです。現在主流となっているシリコン系の太陽電池は、1954年にベル研究所のダリルシャピンらにより発明されました。

開発当初の太陽電池は電力への変換効率が低かったため、通信や宇宙開発向けなど用途が限られていました。しかし、その後の変換効率の改善に伴い、産業や家庭向けの太陽光発電システムが世界的に普及しました。

太陽光発電は無尽蔵に降り注ぐ太陽光を利用し、発電中にCO2を排出しないため、再生可能エネルギーの1つとして注目が集まっています。日本政府は、2030年度の総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を、2019年度実績の約2倍の36~38%にする目標を掲げており、太陽光発電のさらなる普及が求められています。

太陽光発電の仕組み

太陽光発電システムにおいて、太陽光を電気に変換する重要な役割を担うのが太陽光パネルです。太陽光パネルはソーラーパネルやモジュールとも呼ばれ、中にたくさんの太陽電池が接続されていますが、発電機能のみで充電機能はありません。

現在主流となっているシリコン系太陽電池は、上からマイナス電極、反射防止膜、N型シリコン半導体、PN接合面、P型シリコン半導体、プラス電極で構成されます。PN接合面に光エネルギーが届くと、N型シリコン半導体はマイナスに、P型シリコン半導体はプラスになり、両側に導線をつなげると電気が流れ、光エネルギーが続く間は電気が発生し続けます。光を電気に変えるには、光起電力効果という半導体の物理現象を使っています。

太陽の光エネルギーを電気に変える効率のことを変換効率と呼びます。例えば、パナソニック エコソリューションズ社(現:パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社)が2019年1月に発売した「太陽電池モジュール HIT P255αPlus」のモジュール変換効率は19.9 %です。2020年7月にはNEDOとシャープが、NEDO事業で開発した変換効率31.17%の太陽電池モジュールと同等のセルを活用し、電気自動車用太陽電池パネルを製作したと発表しています。

太陽光発電の特徴

太陽光パネルで発生した電気を活用するために、他にも多くの機器が必要です。太陽光パネルでは直流電気が発電されるため、パワーコンディショナーで家庭向けの交流電気に変換しなければなりません。パワーコンディショナーで変換された交流電気を各部屋へ分配したり、余剰電力を売るために送電線へと送り出したりする機能を有するのが分電盤です。さらに、発電量や家庭内での消費電力、電力会社への売電電力の表示や、故障の有無などを確認できる発電モニターも必要です。

太陽光発電の特徴として、HEMS(ヘムス)との相性の良さがあります。HEMSとは、「Home Energy Management System」を略した用語で、家庭向けのエネルギー管理システムのことです。家電機器や給湯機器などをネットワーク化することで消費状況の監視や遠隔操作、自動制御を可能にし、省エネを促進します。使用電力量に応じて太陽光発電の電気を使ったり、蓄電池の電気を使ったりするなど、最適な自動制御が可能です。

また、太陽光発電システムを搭載したソーラーカーポートの場合、売電による収益でカーポートの費用を回収することで、実質負担無しで設置できる可能性があります。太陽光発電システムとカーポートをパッケージ化した、太陽光発電の設置を前提に設計された製品も販売されています。丈夫な構造のカーポートであれば、太陽光発電システムの後付けも可能です。

太陽光発電のメリット

太陽光発電を導入する最大のメリットは、これまで電力会社から買って消費していた電力を、自分たちでまかなえることです。しかも、使い切れなかった余剰電力を売ることで収益を得られ、節約と売電による経済的メリットが期待できます。経済的メリットにより10年程度で投資金額を回収できるとされ、多くの人たちにとって太陽光発電を導入する理由になっています。また、電力の消費について関心を持つことで節電意識が高まり、電気使用量自体が1割ほど少なくなるとも言われています。

次に、地震や台風などの災害による大規模停電が起きた際でも、非常用電源として使用できるメリットがあります。ほとんどのパワーコンディショナーに搭載される自立運転機能を使えば、太陽光パネルが発電した電気エネルギーを1500Wまで家庭内で使えます。合わせて家庭用蓄電池も導入している場合、発電ができない夜間や雨天時でも電気を使うことができます。

太陽光パネルには可動部がないため寿命が長く、メーカーの標準的なパネル出力保証の期間が25年間と長いのもメリットです。パワーコンディショナーは15年程度で交換が必要になると言われていますが、パネルは30年程度が寿命の目安とされます。電力の固定価格買取制度(FIT)を利用して、約10年で初期投資費用を回収できるとされており、投資商品として比較的安定した収入が期待できるのも魅力です。

太陽光パネルを敷設した下の部屋は、断熱効果により夏は涼しく、冬は暖かくなるメリットがあります。太陽光パネルにより夏の強い日差しが遮られ、実際に敷設した人の話では、室温が2~5℃程度低くなるといいます。逆に冬は、太陽光パネルが屋根からの放射冷却を抑制するため、室内の熱が外に逃げにくくなります。

最後になりますが、地球規模での環境保全の面でも大きなメリットがあるのが太陽光発電です。発電時に一切の排出物を出さず、可動部分も無いため騒音も発生しないクリーンなエネルギーです。枯渇のリスクがある化石燃料を使わず、排出ガスを出さないため地球温暖化防止への役割が期待されています。

太陽光発電のデメリット

太陽光発電には多くのメリットがある一方、デメリットもあるので安易に導入を決断してはいけません。導入費用は年々安くなっており、10年程度で投資金額を回収できるとされていますが、車を1台買えるほどの初期投資金額と、定期的なメンテナンス費用がかかります。太陽光発電導入専用の「ソーラーローン」や、地方自治体の補助金を利用するなど、無理のない計画的な負担が必要です。

太陽光をエネルギーにしている特性ため、どうしても日射量に応じて発電量に差が生じます。日照時間が長く、晴れた日が続く時期は発電量が増え、逆に雨の多い時期や、日照時間の短い冬は少なくなります。季節により発電量は増減しますが、年単位で考えれば安定した電力量を得ることができます。日射量が多く、陰になる箇所の少ない設置場所が確保できない場合は、当然太陽光発電の導入はすすめられません。また、気温が高すぎても発電効率が下がる特性があります。

太陽光発電を新築時に取り付ける場合は、ローンをひとまとめにできたり、設置に適した屋根の形状にできたりするなど、費用面や発電効率などにおけるメリットがあります。逆に後付けの場合、新築の場合と比べると施工費用がかかったり、屋根の形が設置に向かなかったりするケースがあります。さらに、屋根の面積が極端に小さかったり、南方向以外の向きだったりすると、十分な発電量を得られないことや、太陽光パネルの重さによる、建物の耐久性への影響も考慮する必要があります。屋根の北面に設置をした場合に、反射する光により近隣トラブルに発展する事例も起きています。

メリットばかりを強調して、簡単に稼げるようなシミュレーションを提示する業者は要注意です。自分で相場価格を調べたり、複数の業者から見積もりを取ったりするなどして、不当な高額契約をしないようにしましょう。

反対に、相場から極端に安い提示をする業者にも注意が必要です。そのような業者は工事が粗雑で、結果、雨漏りや電気系のトラブルが発生するリスクや、メーカーの施工基準から外れた工事により、メーカー保証の対象外となってしまうこともあります。2020年1月の帝国データバンクの発表によると、2006~2019年に457社の太陽光発電関連業者が倒産しています。業者が倒産するとアフターフォローを受けられなかったり、工事前に頭金を持ち逃げされたりするケースもあります。このような事態を避けるため、業者選びは慎重にしなければなりません。

最後に、太陽光発電は2010年代から急速に広まり始めましたが、太陽光発電パネルの寿命は25~30年ほどと言われています。2030年代に入って寿命を迎えるパネルが多数出てきたとき、大量のゴミとパネルに使われている有毒物質をどのように処分するのか、対応策が求められています。

「住宅用太陽光発電」と「産業用太陽光発電」の違い

太陽光発電には、10kW未満の「住宅用」と10kW以上の「産業用」があり、それぞれ売電価格と売電期間が異なります。2022年の住宅用太陽光発電の売電価格(/kWh)は17円(税込み)で、売電期間は10年間です。産業用太陽光発電の売電価格(同)は、10kW以上50kW未満が11円(税込み)、50kW以上250kW未満が10円(税込み)で、売電期間はどちらも20年間です。ちなみに、1MW(=1000kW)以上の発電能力がある大規模太陽光発電所のことを「メガソーラー」を呼びます。

10kW以上の産業用太陽光発電は、2019年度までは余剰売電と全量売電を選択できましたが、2020年度から50kW未満の太陽光発電は全量売電ができなくなり、余剰売電のみとなっています。また、10kW以上50kW未満の太陽光発電については、発電した電気の30%以上を自家消費することが必須要件となり、今後は、小中規模のミドルソーラー太陽光発電所の建設激減が予測されます。

太陽光発電の設置にかかる費用

経済産業省資源エネルギー庁の資料によると、2022年の住宅用太陽光発電の相場価格は、設置容量5kWのシステムの設置費用が137万5000円で、kW単価は27.5万円/kWになります。さらに、20年間運転した場合のメンテナンス費用として、4年に一度の定期点検に約10万円、パワーコンディショナーの交換費用に約20万円かかるのが一般的です。同じ容量の太陽光発電でも、メーカーによって価格が大きく異なるので、設置費用を抑えるために、価格の安いメーカーを選んだり、ソーラーローンや地方自治体の補助金を活用したりする方法も検討しましょう。

まとめ

太陽光発電の導入を検討している方の中には、メリットを理解していても、デメリットや詳しい仕組みについては詳しくない方もいるかもしれません。メリットばかりに目が奪われ、デメリットや仕組みを知らずに導入を急いでしまうと、「設置しなければよかった」と後悔する可能性が高くなります。

そうならないためには、まず自分で情報を収集して調べる姿勢が重要です。また、メリットばかり強調するのではなく、しっかりとデメリットを説明し、現実的な収益化のシミュレーションを提示してくれる、信頼できる業者の存在も欠かせません。以上の条件が整うことで、太陽光発電のメリットを最大限に享受できる導入が可能になるのです。

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