蓄電池とは? 仕組みやメリット、太陽光発電との連携について解説

蓄電池とは?

「蓄電池」とは、その名が示す通り電気を蓄えられる電池のことです。リモコンやラジオなどの小型電気製品でよく使う一般的な乾電池は、放電が終わったら使えなくなるタイプの電池で「一次電池」と呼ばれます。それに対して蓄電池は、放電し終わっても充電することで繰り返し使えるタイプの電池で、「二次電池」や「充電池」と呼ばれ、「バッテリー」も蓄電池を指す場合もあります。

私たちが日常的に使っている蓄電池には、スマートフォンやノートパソコン用の「リチウムイオン電池」、自動車用の「鉛蓄電池」があります。また最近では、太陽光発電システムと連携して電気をためる家庭用蓄電池や、電気自動車(EV)用蓄電池の普及が広がっており、環境問題解決への貢献が期待されています。

蓄電池の仕組みは?

蓄電池にはいくつかの種類がありますが、充放電の仕組みは基本的に同じです。プラス極(正極)とマイナス極(負極)の金属と電解液が化学反応することで、充電と放電を繰り返すことができます。蓄電池の種類ごとに電極に使う金属や電解液が異なり、充放電効率や容量、寿命に差が出ます。家庭用には多用途に活用できるリチウムイオン電池が、産業用には長寿命で大容量のNAS(ナトリウム・硫黄)電池が適しています。

蓄電池の種類は?

鉛蓄電池

1859年にフランスのガストン・プランテが発明した鉛蓄電池は、長年にわたる性能や品質の向上を経た、信頼性の高い蓄電池です。自動車のエンジン始動やライト点灯といった車載システムの電源や、電動フォークリフトやゴルフカートの主電源などに広く利用されています。プラス極に二酸化鉛(PbO2)、マイナス極に鉛(Pb)、電解液に希硫酸(H2SO4)が用いられ、化学反応により電解液中に発生した硫酸イオンが移動することで充放電します。

ニッケル水素電池

ニッケル水素電池は乾電池タイプの蓄電池で、プラス極にオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、マイナス極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウム(KOH)のアルカリ水溶液を用います。以前の乾電池タイプの蓄電池は、ニッケルとカドミウムを電極に使用していましたが、カドミウムは毒性があるためニッケル水素電池に置き換わりました。デジタルカメラやノートパソコン、ハイブリッドカーの電源として広く普及しています。

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器向けに主流となっている蓄電池です。近年では大容量化が進んでおり、EV用や家庭用、産業用蓄電池として活躍の場が広がっています。代表的な材料としては、プラス極にリチウムを含む遷移金属酸化物などが、マイナス極には炭素材料、電解液にリチウム電解質塩を溶かした有機溶媒が用いられており、リチウムイオンの移動により充放電を繰り返します。

NAS電池

日本ガイシが開発と製造を手掛ける、コンパクトながら大容量の蓄電池です。電力会社向けの太陽光発電や風力発電の大規模電力貯蔵施設、企業の節電や非常用電源向けに導入されています。プラス極に硫黄(S)、マイナス極にナトリウム(Na)、両電極を隔てる電解質にファインセラミックス(βアルミナセラミックス)が用いられており、硫黄とナトリウムの化学反応で充放電を繰り返します。電力負荷平準によるピークカットや再生可能エネルギーの安定化、節電対策、環境負荷低減への貢献が期待されます。

レドックスフロー電池

レドックスフロー電池は、バナジウムベースの電解液を循環させることで電子を移動させ、充放電する仕組みの蓄電池です。電解液の酸化還元反応を利用して充放電します。電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命で、不燃性の電解液を用いて常温での運転が可能なため、電力系統用蓄電池に適しており、太陽光や風力発電の出力変動緩和や平滑化、ピークカットなどへの活用が見込まれます。

蓄電池のメリット・デメリットは?

メリットその1:繰り返し充放電ができる

蓄電池の最大のメリットは、放電し終わっても充電すれば繰り返し使えるコスト面の優位性です。充電してから放電し終わるまでの1サイクルを、寿命まで何回できるかは種類や性能によって差があり、目安として鉛蓄電池が3000回、ニッケル水素電池が2000回、リチウムイオン電池が1万回、NAS電池は4500回、レドックスフロー電池は1万回以上です。

メリットその2:災害時のバックアップ電源になる

災害などで停電になっても、蓄電池にためた電気を使えることは大きなメリットです。しかし、蓄電池を内蔵している携帯電話やノートパソコンは一時的に使えても、内蔵していない照明やエアコン、冷蔵庫といった家電は使用できなくなってしまいます。そのため、日本政府は災害対策として、住宅全体の電気を一時的に確保できる家庭用蓄電池の導入を推奨しています。

メリットその3:太陽光発電との併用で節約効果を向上

太陽光発電と蓄電池をセットで導入すれば、発電した電気を蓄電池にためることで、家庭での消費に回すことができ、電力会社から買う電気を節約できます。電力会社への売電価格は下落方向にあるため、売電より家庭で消費した方が経済的なメリットが大きくなる場合があります。また、発電や充電、電力使用の状況の管理システムを利用することで、よりスマートな電気の使い方も可能になります。

メリットその4:ピークシフトで電気料金の削減と社会貢献に

ピークシフトは、電力需要が低い夜間に電気を蓄電池にため、電力需要が高まる日中の時間帯に放電することで、最大需要電力を低く抑える取り組みです。電力需要が高い時間帯は、電力会社が提供する電気の料金は高くなり、逆に需要の低い時間帯は電気料金が安くなります。電気料金の安い時間帯に充電することで電気料金の削減につながり、また、最大需要電力を低くすることで、電力供給の安定化や二酸化炭素排出量の削減にも貢献できます。


デメリットその1:使用年月とともに充電性能が劣化する

蓄電池は、充電と放電のサイクルを繰り返していると、徐々に充電性能が劣化してきます。特にニッケル水素電池のサイクル回数は2000回、寿命は5~7年となっており、蓄電池の中では短い種類になります。過放電や高温、多湿な場所に弱く、寿命が短くなる特性があるので、電池残量が3分の1程度になったら充電をし、保管場所には気をつけるようにしましょう。

デメリットその2:価格が高い

リチウムイオン電池は、ノートパソコンや携帯電話向けの小容量のものから、家庭用や産業用、EV向けなどの大容量のものまで用途の幅が広がっていますが、需要の増加や材料価格の高騰が今後の普及のネックとなっています。特に近年は、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの寸断や、ロシアのウクライナ侵攻による資源価格高騰など、不確定な要素があるのも気がかりです。

デメリットその3:最適な蓄電池システムの選択が難しい

家庭用蓄電池を導入するにあたり、効果を最大化するためにはさまざまなポイントを押さえる必要があります。たとえば、家庭に適した蓄電容量や種類の把握、設置場所の確保、アフターサービスや保証期間の確認、補助金制度を受けるための条件などです。誤った選択をしてしまうと、期待したメリットが得られないリスクがあるので、注意深く検討する必要があります。

蓄電池の補助金は?

国は、2030年度に2013年度比で温室効果ガスの46%削減を目指し、さらに、2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念として位置付けています。そのため、太陽光発電を設置し、その建物内で電力を消費する自家消費型システムの導入を推進しており、それに伴って蓄電池の重要性が高まっています。国や自治体は家庭用、産業用蓄電池の導入に対し、補助金を提供することで普及の拡大を図っています。

蓄電池の価格は低下傾向にありますが、現在でも1kWhタイプの家庭用蓄電池は50万円前後、3~4kWhは100万円前後かかり、工事費用も含めると一般家庭にとって大きな負担になります。少しでも負担を軽減するために、国や自治体からの補助金は積極的に利用しましょう。

現在住んでいる自治体や導入するシステム、家庭用か法人用かで補助金を受けられる条件が異なり、予算は上限に到達すると受け付けを終了します。申請は購入者でもできますが、販売業者の代行も可能なので、補助金の受け取り条件やスケジュールなどの詳細は、販売業者に相談するとよいでしょう。

家庭用蓄電池の補助金について

家庭用蓄電池の国の補助金には、「DER補助金」、「ZEH補助金」、「ストレージパリティ補助金」などがあります。

DER補助金の正式名称は「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金」ですが、DER(蓄電池等を活用した分散型エネルギーリソース)の実証事業向けの補助金なため、DER補助金と呼ばれています。家庭用蓄電池の補助金は3.7万円/kWhか、工事費の1/3のどちらか低い方になります。

対象は、太陽光発電を設置済み、もしくは太陽光発電と蓄電池を同時に設置し、DERの実証への参加に同意する方です。実証期間は2024年までの予定ですが、実際の実証期間は1年間のうち1週間程度で、参加者の負担はほとんどありません。実証と実績報告が完了すると、年度内に補助金を受け取れます。

自治体の補助金としては、東京都の「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」があり、家庭用蓄電池の設置に対し10万円/kWhの補助金を出しています。

産業用蓄電池の補助金について

産業用蓄電池の国の補助金には、「DER補助金」と「ストレージパリティ補助金」があります。

DER補助金に関しては家庭用蓄電池とほぼ同じですが、補助金は6.2万円/kWhか、工事費の1/3のどちらか低い方になります。

産業用補助金の対象となるのは、蓄電池の容量が火災予防条例で定める安全基準の対象となる4800Ah・セル以上の設備、各種法令等に準拠した設備、蓄電システム購入価格と工事費の合計が目標価格以下となる条件を満たす必要があります。2022年度の産業用蓄電システム目標価格は、設備費と工事費、据付費の合計が19万円/kWhとなっています。

まとめ

蓄電池には、乾電池型やモバイルデバイス向けの小容量のものから、EVや家庭、産業向けの大容量のものにいたるまで、さまざまな種類があります。効率的なエネルギーの消費に貢献することから、環境政策の重要な役割を担うことが期待されています。

ノートパソコンや携帯電話に使われているリチウムイオン電池は身近な存在になりましたが、家庭向けや産業向けの蓄電池は構造や外部システムとの連携など複雑な要素もあり、導入障壁は高い状況にあります。しかし、これから本格化する持続可能な社会の実現に向け、蓄電池の活用は欠かせません。一人一人が少しでも蓄電池の仕組みや役割に興味を持つことが、社会貢献の一歩になるのかもしれません。

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