脳の形状に沿う柔軟なブレインコンピュータインターフェースの開発――ラットの脳活動を高解像度に記録

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Image credit: Shadi Dayeh / UC San Diego / SayoStudio

高度なリソグラフィ技術により作製した柔軟な基材と貫通型マイクロニードルを備えたブレインコンピュータインターフェースが開発された。カリフォルニア大学サンディエゴ校とボストン大学の共同研究であり、2022年2月25日付で「Advanced Functional Materials」に掲載された。

ブレインコンピュータインターフェースとは、脳の神経活動を計測して人の思考を読み取り、機械を動かす装置だ。重度肢体不自由者の人たちの意思伝達装置として期待されている。

貫通型マイクロニードルを備えた既存のブレインコンピュータインターフェースの最適な標準装置として「Utah Array」が知られる。Utah Arrayは、脳卒中患者や脊髄損傷者を助けることが実証されている。Utah Arrayを埋め込んだ人は、ロボットの手足を制御し、物を動かすといった日常生活を取り戻せる。しかし、Utah Arrayの基材は硬くて柔軟性がなかった。

対して、今回開発したブレインコンピュータインターフェースの基材は柔軟で形が変えられるため、脳の複雑な形にも沿うことができ、脳と電極をより密着させ、脳活動の信号をより均一に記録できる。人間の髪の毛よりも細いマイクロニードルは、柔軟な基材から突き出ており、細静脈に穴をあけることなく脳組織の表面に入り込み、近くの神経細胞からの信号を記録する。

今回の研究では、モデル動物としてラットを用い、196日間にわたる埋め込み期間中、脳の広範囲な領域から安定して信号を記録することに成功した。1024本の貫通型マイクロニードルが、細かい刺激によって引き起こされた脳活動の信号を記録できることを実証した。本成果は、現在の技術と比較して、マイクロニードル数の10倍に相当する。つまり、脳をカバーする範囲が10倍となる。

当基材は、柔軟という特徴に加え、従来のガラス基材よりも薄くて軽く、接触する脳組織への負荷を軽減できる可能性があるという。さらに、透明でもあるため、他の方法では不可能な動物モデルを必要とする神経科学の基礎研究への貢献も期待できる。なお、研究チームは貫通型マイクロニードルから光刺激に応答した電気信号を記録できることも実証した。

これらの特徴を有した基材は、両面リソグラフィにより制作された。硬いシリコンウエハーの両面に微細な回路を構築する。片面では、シリコンウエハー上に柔軟で透明な膜を追加する。この膜の中に、チタンと金の配線からなる2層膜を埋め込み、配線はシリコンウエハーの反対側でマイクロニードルの位置に一致する。

柔軟な膜を付けた後、反対側からシリコンを、薄く尖ったシリコンの柱を除いてエッチングする。この尖ったシリコンの柱がマイクロニードルであり、シリコンをエッチングした後にチタン/金の配線と一緒に残る。配線は、標準的で拡張可能な微細加工技術によって作られており、数万本のマイクロニードルに拡張できる。

本両面リソグラフィ微細加工技術は、アメリカで特許を取得している。

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