積み重ねて1万本超! 10周年の歩みを人気記事と振り返る【#fabcross10周年】

fabcrossは2013年10月のオープンから10周年を迎えました。ここまで続けてこられたのも、いつもご覧いただいている読者の皆さん、取材に協力してくださる方々のおかげ。心から感謝を申し上げます。

「新しいものづくりがわかるメディア」として立ち上がったfabcrossは、デジタルファブリケーションやIoT、ロボティクスからスタートアップまで、個人が主役となる新しい時代のテクノロジーを紹介してきました。ハードウェアに特化した専門メディアとして、国内外の最新ニュースや調査・インタビュー記事のほか、ユニークな工作系の記事もお送りし続けています。

ものづくりを取り巻く環境も大きく変化したこの10年。さらなるメディアの継続と発展を願い、編集部による10年間の振り返りを行いました。10年の歳月を彩る人気記事の中には、昔見たあの記事も、まだ見ぬ発見も眠っているかもしれません。ぜひお付き合いいただければ幸いです。

もし、皆さんの思い出の記事があれば、 #fabcross10周年のタグを付けてSNSで投稿してみてくださいね!

未経験からの1万記事。70人以上のライター陣と歩んだ10年間

fabcrossがオープンしたのは2013年10月。設計・開発から解析、設計補助まで、設計開発領域でエンジニアリングソリューションを提供するメイテックの「世の中のエンジニアやものづくりに携わる人たち、またエンジニアという職業を視野に入れているすべての理系人材に役立つ情報を提供したい」という思いから、Webメディアの立ち上げが決まり、2012年の夏頃から準備が始まります。電子工作に特化したSNSなどのプランもあった中、方向性を決定づけたのはクリス・アンダーソンによる書籍『MAKERS —21世紀の産業革命が始まる』(2012年、NHK出版)でした。

メイカーズと呼ばれる新たなものづくりの旗手の登場や、欲しいものは自分で作るパーソナル・ファブリケーション文化。それらを軸に、これからのものづくりを支える製品や技術、拠点となるファブ施設に関する情報を紹介する専門メディアとしてfabcrossは産声を上げました。2015年には姉妹サイト「fabcross for エンジニア」も登場。エンジニアのキャリアを応援するメディアとして、製造業の動向やキャリアインタビューなどに特化した記事を扱っています。

これまでfabcrossに掲載された記事の数は、2023年11月までの累計で1万1295本。執筆に関わったライター陣は70人以上にのぼります。学生やクリエイターをはじめ、複数のメディアに関わる編集者やエンジニアなど、それぞれの得意領域が反映されたバラエティ豊かな記事の数々は、fabcrossならではのユニークなポイントといえるでしょう。

方向性を決定づけたのは「鯉のぼり」? バラエティ豊かすぎる工作記事

さて、ここからは過去の人気記事と共に、fabcrossの10年間を振り返っていきましょう。リリース直後、Webメディア運営のノウハウもない中、さまざまな試行錯誤が行われます。

まず人気を博したのは、元エンジニアの漫画家 見ル野栄司さんと制作した絶対に音が鳴らないトイレットペーパーホルダーを作ってみたや、メイカーを集めて議論したリアルイベントのレポート【fabcross Meeting】RAPIROに学ぶ、戦略的クラウドファンディングなど。生まれて間もないメディアながら、メイカームーブメントという旗印のもと、多くの人に関心を持たれていたことがうかがえます。2012年はMake: Tokyo MeetingがMaker Faire Tokyoとして生まれ変わった年でもあり、世の中にメイカーという言葉が浸透し始めた時期ともいえるでしょう。

そして、2014年度には編集部内で「これがなかったら、きっとfabcrossは続いていない」と呼ばれるほどの大ヒット記事が登場。それが【動画あり】子どもの日なので高度30000mまで鯉のぼりを揚げてみた、です。

ヘリウム風船を使った空中撮影技術を用いて、宇宙まで鯉(こい)のぼりを揚げるというこの企画。地球をバックにした鯉のぼりというインパクトや、猛スピードで回転しながら飛び散っていくはかない姿などがニコニコ動画などでも人気を博し、圧倒的なアクセスを集めました。ちなみに、この企画に協力してくれた岩谷圭介さんは、その後テレビ番組「情熱大陸」でも取り上げられ、気球を用いた有人宇宙飛行を目指す岩谷技研を設立し、スタートアップとして事業に取り組んでいます(参考:今度の週末は宇宙に行こう——有人気球で身近な宇宙遊覧を目指す北海道のスタートアップ「岩谷技研」)。

続く2015年にはてらおか現象さんが描いた、生命の輝きを機械と漫画で体感する「プリンをプルプルさせるマシン」も大ヒット。こうしたビジュアル的にもインパクトのあるものづくりや工作企画が人気を集め、fabcrossは「あの記事が載っているメディアね!」と認知されるようになり、読者数が大きく広がりました。

あっと驚くインパクトや、思わず笑ってしまうビジュアルなどなど、作り手の個性が光る工作系記事はその後もfabcrossの人気企画として続いていきます。

段ボールに雑に付けられたRaspberry Piが衝撃を与えたそれ、ラズパイでつくれるよ——人類史上最も無駄のないノートPC。をつくれるよ、見間違いかと思うほどのビジュアルが強烈な5kgのボウリング球で巨大トラックボールを作ったら。 「無駄づくり」でおなじみとなった藤原麻里菜さんのスタバでメッセージを書いてもらえない人に贈るマシーンなど、主には役に立たない方向性での工作企画が読者の心をつかんでいたようです。

その集大成ともいえるイベントが、2016年と2017年に開催された「頭の悪いメカ発表会」。冗談のわかるWebメディア仲間であるデイリーポータルZと共催し、DIYギャグ工作会のアベンジャーズとも呼べるメンバーが集まる伝説的なイベントとなりました(世の中の偏差値を下げろ!「頭の悪いメカ発表会」すごーい!あたまわるーい!知恵の芽を摘む「頭の悪いメカ発表会2」)。

ちなみに、2023年10月にオライリー・ジャパンから発刊された書籍『雑に作る—電子工作で好きなものを作る近道集』の構想は、このイベントの際の雑談から生まれていたそう。fabcross、意外なところでムーブメントを支えていたようです(参考:失敗や未熟を全肯定——「技術力の低い人限定ロボコン」「雑に作る」石川大樹の生き方)。

深圳調査から政府資料まで 社会を切り取るインタビュー&調査記事

撮影:水戸秀一

腹の底から笑える工作記事の一方で、メイカーやクリエイターの活動を掘り下げるインタビューや取材記事も充実。fabcrossに初めて掲載された記事も、自律移動ロボットベンチャーの先駆者であるZMP社長の谷口恒氏へのインタビュー「自分のやりたいことをやっているうちにRobotCarに行き着いた」でした。

インタビューで扱う対象は、最先端のデジタルテクノロジーだけには限りません。旅館の食事でおなじみの固形燃料を作るニイタカを取材した、きっかけはトラブルだった——旅館の食事に欠かせない「例の青い固形燃料」が生まれた理由は、2018年度のアクセス数トップ10にランクインしています。

中国・深圳(しんせん)で生活を送りながらメイカーズのエコシステムを掘り下げる、高須正和さんによる記事も大人気。連載「アジアのMakers」からは、コピーキングの異名を持つ中国の発明家「山寨王」の考える中華コピー対策1500円のニセAirPodsを分解してわかった中国半導体産業の進化など、高須さんらしい切り口で中国のリアルに踏み込んだ記事が大きな話題を呼びました。

検索で「ファブ施設」のカテゴリに訪れる人も少なくないようです。グルメサイトのものづくり版という発想でスタートした、日本国内のファブ施設を取材する「fabなび」では、定期的な調査を重ね、これまで全国60カ所以上を訪れてきました。毎年末に出す定例調査は、ファブ社会の動向を追うためのユニークな資料として、政府や学生の研究などで引用されることも少なくありません。

2015年には、九州経済産業局の特別協力により、スタートアップのパートナーとなる九州の企業を紹介する「工場なび」を実施。ファブ施設や工場の動向を追うメディアとして、経済産業省が発行する2016年版ものづくり白書に情報提供したことは、設立時には想定もしていなかった成果の一つといえるでしょう。

ものづくりの現在や未来を見据える企画として、識者へのインタビューやファブ施設関係者を交えたイベントのレポートなども定期的に実施。積み重なった10年分のアーカイブは、社会の変化を見るための資料として活躍しそうです(参考:社会に求められるファブ施設とは——ものづくりから始まるコミュニティの在り方)。

ラズパイ無双はいつから? トレンドワードで追う10年間

ここでは人気記事に頻出するワードを追いかけてみましょう。

撮影:加藤甫

3Dプリンターの組み立てを詳細に追った3Dプリンタは作れる! 自作3Dプリンタを組み立てようは、2014年の公開から3年連続で年間アクセス数トップ10にランクイン。デジタルファブリケーション普及期を象徴する記事といえそうです。3Dモデリングを学ぶ人に向けて書かれた連載、「かんたん3Dモデリング~Fusion 360はじめの一歩」もよく読まれていました。

そのほかにも、22万円台の光造形3Dプリンタ「ノーベル 1.0」はどこまで使えるか——実機レビューや、超お手軽?家庭用レーザーカッター「Smart Laser Mini」を組み立ててみたなど、デジタル工作機械の体験記事は強い人気を誇るジャンルの一つ。今でも3Dプリンターの新機種レビューはコンスタントに読まれており、一つの制作手段として世の中にしっかり広まった印象を受けました。

2018年ごろから、上位記事のタイトルには「Raspberry Pi」「ラズパイ」が頻出。さまざまな機能や付随品をカジュアルな使い方で楽しむ連載「それ、ラズパイで作れるよ」のほか、開発環境の拡張やHATなど関連商品のニュース記事も常に人気でした。

Arduinoやmicro:bitなど、他のシングルボードコンピューター関連の記事もよく読まれていましたが、Raspberry Piが頭一つ抜けているようです。2016年2月のRaspberry Pi 3 Model B発売により、フルLinuxが動く環境とEthernet/Wi-Fiインターフェースの搭載によるネットワーク接続が容易に実現し、ホビーのみならず実務レベルで使えるようになったことが、注目を集めた要因の一つでしょうか。

また、初めてRaspberry Piに触る人に向けて書かれた趣味から仕事まで使える!Raspberry Pi(ラズパイ)の使い方とオススメキットをはじめ、「土日で完成! 趣味のラズパイ」「今さらきけない『ラズパイってなんですか?』」など、教科書やワークブックのように使える連載企画も好評です。

世相を反映した記事も目立ちます。2020年の小学校プログラミング教育必修化に先立ち2017年から始まった「2020年プログラミング必修化!『作る』ことで分かるSTEM教育」の連載は、教える側と教わる側の双方にとって、新しいものづくりを始めるための参考になる内容でした。

2020年には新型コロナウイルス関連の記事として「クリアファイルをフェイスガードに——大阪大学、新型コロナ対策『フェイスシールド』の3Dデータを公開」や、「ワンタッチでフィルター交換できる3Dプリントマスク、3Dプリントデータを公開」などにアクセスが集中。パンデミックにおける3Dプリンターや分散製造の可能性が感じられた、まだ記憶に新しい出来事です。

ここ数年では2000年間「不可能」だったピタゴラスの定理の解法を高校生が発見をはじめ、海外発の学術研究や知的好奇心をくすぐるニュース記事も人気に。面白工作から未来を占うインタビュー、実用的な技術連載まで。改めてfabcross読者の興味やジャンルの幅広さを感じられた、トレンドワードの数々でした。

編集部が振り返る、メディアとラボと教育と

座談会に参加した編集部の面々(撮影:桜庭康人)

ここからは、現役編集部のメンバーが、それぞれの専門分野からこの10年の変化や、思い出深い記事と共に振り返ります。

まずは雑誌やWebニュースなどの編集に多数携わり、fabcrossの立ち上げ前から関わっていた佐々木千之さん。「新設のWebメディアは3年続かないのがほとんどで、10年続くのは本当に珍しいこと。他メディアよりも少しだけオープンが早かったり、ちょうど良いタイミングでバズる記事が出たり。いい人たちとの縁もあり、運にも恵まれた10年だったと思います」と振り返ります。

佐々木さん「デジタル工作機械の値段が下がり、数十万円もあれば一通りの設備がそろうようになりました。生成AIの発展はものづくりにも影響し、ジェネレーティブデザインや手軽な3Dスキャンが普及する近年の状況は、DTM文化におけるボーカロイドの登場とも重なります。ものづくりのハードルが下がる中で、fabcrossは初心者や次のステップへ踏み出そうとする人を応援する役割を担えるとよいですね」

印象に残っている記事は、慶應大学の田中浩也教授らにインタビューした、街中の誰もがものづくりをする社会「ファブシティ」「キャンパスを将来のファブ社会の実験場に」——慶應義塾大学SFCが進める“ファブキャンパス”が目指すもの。10年前からファブ社会を描き続ける田中教授のビジョンは、オンデマンド生産サービスの充実や個人による製造販売の多様化という形で、少しずつ実現に向かっていると感じられたようです。

第11回世界ファブラボ会議に参加した際の筆者(淺野)。当時は大学4年生でした。

続いては、デジタルファブリケーションを学ぶ学生時代にライターとしてfabcrossにジョインした、この記事の筆者でもある淺野義弘。研究室の学生として訪れたイベントを綴った「ファブラボ」の原点に触れる旅——第11回世界ファブラボ会議参加レポートは、ほぼ初めて執筆した長編記事。これをきっかけにライターとしてのキャリアを歩み始めたため、fabcrossに人生を変えられたといっても過言ではありません。

全国のファブ施設を取材するfabなびは、知人や友人を訪ねる機会にもなるため、ライフワークとして続けたいと思えるほどになりました。2023年8月には自身のファブ施設「京島共同凸工所」を墨田区で立ち上げ、試行錯誤の毎日を送っています。

淺野「取材で話を聞くのと、自分で施設を運営するのは全然違いますね。ファブ施設に対する過度な期待や失望がなくなった今、活気あるファブ施設では、意欲あるオーナーやスタッフが自分自身のプロジェクトを推進しているように見えます。ただ場所として開くだけでなく、地域に根ざして何かを実現し、人を巻き込んでいくための場所としてファブ施設が続いていくのではないでしょうか」

子ども向けの科学書などを手がけてきた金子茂さんは、fabcrossでもSTEM教育に関する記事を多数執筆。多くの読者に読まれる「マイコンボードをはじめませんか?」シリーズでは、Raspberry PiやArduinoなどを始める人に向けて、入門に必要な情報をやさしく丁寧に整理しました。「自分でも手を動かしながら、情報をまとめていきました。初めて触れる機材もありかなり苦労しましたが、その視点が初心者にも受け入れられたのでしょう」と分析します。

金子さん「2020年のプログラミング教育必修化を見込んで、2017年からSTEM教育の連載を始めました。最初は教育業界としてもフワッとした雰囲気でしたが、プログラミング教育の需要と合わせ、fabcross的にも新たな層にリーチできたと感じます」

これからは、教育機関の中でもメイカースペース的な場所が増えていくことでしょう。小学校から高校までの12年間、そして大学での教養科目も含めて、プログラミングをしっかり学ぶ流れの中で、fabcrossのニーズも続いていくはずです。もしかしたら、fabcross for Kidsのような展開もあるかもしれませんね、と話が盛り上がりました。

スタートアップをめぐる変化、そしてものづくりは続く

元自動車業界のエンジニアというバックグラウンドを持つ後藤銀河さん。その立場ゆえ、2016年ごろにはパーソナルファブリケーションの動きに温度差を感じる部分もあったそうです。近年では製造業にもDXが行き渡り、スピード感や製品サイクルが短くなり、スタートアップとの距離感も縮まってきたと感じているようです。

後藤さん「初めて取材で訪れたMaker Faire Tokyo 2019のレポートは、取材して1日のうちに記事を上げるので苦労しましたね(笑)。翌年は新型コロナの影響でハイブリッド開催でしたが、その分出展者の話をじっくり聞くことができました。特にタタメルバイクを手がけるICOMAさんからはすごい熱意を感じ、イベント後にも追加取材を行いました」

タタメルバイクの開発経緯は「おもちゃ開発からスタートアップを経て、箱型変形バイクを開発——ロボットを描きたいと夢見た少年が理想のバイクを『再発明』するまで」などで詳しく取材。リソースの限られたスタートアップが何とかアイデアを形にして、コンテストで評価され、多くの人々を巻き込みながら事業化して製品を世に出していく。決して容易な道ではありませんが、本人のやる気や思いがあれば実現するかもしれない——そんな具体例を間近で取材できたことの驚きと感慨をにじませていました。

スタートアップのチームづくりと採用——男女半々/多国籍がベストである理由より、PLEN Roboticsのオフィスとチームの皆さん(写真提供:PLEN Robotics)

fabcrossの立ち上げメンバーであり、ハードウェアスタートアップの取材を多く手がける越智岳人さん。10年前にはクラウドファンディングで開発資金を集めて、メイカーとしてデビューするような挑戦があふれる一方で、そのための環境は必ずしも整っていなかったと振り返ります。

越智さん「アイデアから素早く試作品を作ってみて、イケそうだったらクラウドファンディングを実施して資金集めに大成功する。10年前はそんな牧歌的な時代でしたが、実際にものを作ろうとしても計画通りには進まず、ひどいクオリティになることもありました。今は量産化に成功した先輩企業や、ベンチャーを応援する町工場など、ハードウェアスタートアップを取り巻くエコシステムが育まれつつあります。スタートアップが作る製品も、完全なコンシューマ向けではなく、BtoBの需要を見込んだ、成功確率が高いものが増えてきたように感じます。一方で10万円以下で買える3Dプリンターの品質は格段に良くなり、個人でIoT製品の試作も簡単にできるようになりました。基板や少量の部品もオンラインで気軽に発注できますし、10年前に比べてものづくりの環境は格段に良くなったと思います」

2019年ごろの連載、「ハードウェアスタートアップのヒト・モノ・カネ」では、そんなハードウェアスタートアップを取り巻く環境のワンシーンをうかがい知ることができます。また、コロナ禍を経て地政学的なリスクから深圳の位置付けが変化したり、ここ数年で再びInstaChordのような新しいハードがクラウドファンディングで成功を収めたりと、社会の動向は常に変化しています。こうした時代の潮目を感じてきた越智さんは「これからも未来を作るハードウェアスタートアップを追いかけ、伝える側としてfabcrossの責任を果たしていきたい」と語りました。

下肢障害者のための立って乗る車いす「Qolo」はモビリティが持つ「自由さ」を体現するより、Qoloの代表取締役 江口洋丞さん(撮影:加藤タケトシ)

ものづくりとは縁遠い分野からfabcrossに参加した畑邊康浩さんは、インタビューを通じて、異分野から転身した人の多さに驚いたそうです。理系のバックグラウンドがなくても活躍する事例を目の当たりにしつつ、直近に行われたハードウェアコンテスト「GUGEN2023」の授賞式で、審査員の藤岡淳一氏(JENESIS 代表取締役社長 兼 CEO)が語った言葉に共感を覚えました。

畑邊さん「藤岡さんは、スマートフォンやアプリであらゆることができる環境で、あえてハードウェアで何かをすることの難しさについて触れていました。私も取材対象を探していると『アプリと連携してこんなことができます』とうたう面白い製品が増えていると感じながらも、そこにハードがどのような価値を与えているのか、ハードだからこそ生じるつくる過程の面白さや困難さに着目するようにしています。そしてメディアを運営する私たちとしても、ハードウェアにこだわり続ける理由を考えていくべきだと感じました」

ハードウェアに特化したメディアとして、フィジカルなデバイスの価値を再考する畑邊さん。自身が一つのテーマとして追いかける、体の障害を克服するハードウェアの数々は、その一つのヒントになるかもしれません。中でも下肢障害者のための立って乗る車いす「Qolo」はモビリティが持つ「自由さ」を体現するは、SNSで多くの人の関心を集めていたことが印象的でした。

これからも、fabcrossをよろしくお願いします!

「10周年の重み」を形にした鉄下駄で、fabcrossらしくお祝いしました(鉄下駄製作:平間久美子)

編集部による振り返りと座談会は、なんと半日にも及びました。振り返ればキリがない10年間でしたが、編集部やライター・フォトグラファー陣はもちろん、読者や取材に協力してくれる皆さんの力なくしては、決してここまでたどり着けなかったでしょう。これからも、新しいものづくりがわかるメディア、ものづくりに関わる人を応援するメディアとして、fabcrossを見守っていただけたら幸いです。

皆さんは、fabcrossのどんな記事が記憶に残っているでしょうか? よかったら、ハッシュタグ #fabcross10周年 で教えてくださいね。

fabcrossより転載)

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ライタープロフィール
淺野 義弘

1992年生まれ。大学で3Dプリンターに出会ってものづくりの楽しさを知り、大学院・研究所勤務を経て独立。ものづくりに関わる施設や個人の取材を続け、その魅力を多くの人に届けたいと考えながら、自身でもデジタルファブリケーションを活用した愉快な作品制作に励んでいる。


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