- 2022-5-6
- 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース
- Nature, Shyam Gollakota, Vikram Iyer, タンポポ, リング構造, ワイヤレスセンサー, ワシントン大学, 学術
ワシントン大学のチームは、タンポポの綿毛から着想を得て、風を使って広範囲へ散布できる、バッテリー不要のワイヤレスセンサーを開発した。重量30gと、タンポポの種の約30倍の重さながら、そよ風に乗って100mまで移動できる。低コストかつ短時間で、大量のセンサーを広く物理的に配置可能で、スマート農業や気候モニタリングなどへの利用が期待できる。研究結果は、2022年3月16日付けの『Nature』に掲載されている。
デバイスはセンサーやマイコンなどを必要とするため、タンポポの種のように軽くするのは難しい。設計の第一歩は、風に乗って地上に落ちるまでの時間を稼げる形状を決定することだった。
研究チームは、最適な終端速度を得るために、本物の種を2次元に投影して、構造設計のベースとした。タンポポの種が遠くまで飛ぶ秘密は、軸の1点から広がる細かい冠毛だ。「重くすると、我々の毛構造は内側に曲がり始めた」と、論文の筆頭著者であるVikram Iyer助教授は語る。そのため、リング構造を追加し、剛性を高めつつ、ゆっくりと落下できるようにした。試作したデザインは75種類に及んだという。
また、デバイスを軽量化するために、重いバッテリーではなく軽量の太陽光パネルを採用した。構造を最適化することで、95%の確率で太陽光パネルを上にして着地できている。ただし、バッテリーが無いため、日没後は計測できず、翌朝に再起動するための電力も不足している。そこでコンデンサーを追加し、夜間にいくらかの電荷を蓄えられるようにした。
オンボードのセンサーは温度、湿度、圧力、光量を計測してデータを送信し、日が落ちると一旦電源を落とす。翌朝に電源が入るとデータ収集を再開する。データは後方散乱とワイヤレス通信を利用して、60m離れた場所まで送信できた。
さらに、手動またはドローンによる1回の投下で広範囲に多数のデバイスを散布できるように、個々のデバイスの形状と大きさを少しずつ変えている。これもタンポポの種がひとつひとつ異なり、一部は近くへ、一部は遠くへ飛んで行く様子を模倣したものだ。
「我々は市販の部品を使って小型デバイスを作製できると示した。試作品は、ドローンから一度に何千ものデバイスを放つことができると示唆している。デバイスはひとつひとつ飛び方を変えながら風で運ばれるので、1回の投下で1000個のデバイスネットワークを構築できるだろう」と、論文の上席著者であるShyam Gollakota教授は語る。今後は、生分解性を備えたデバイスの開発を進めるという。
関連リンク
Tiny battery-free devices float in the wind like dandelion seeds