過去最高の熱電変換性能指数を示す環境にやさしい熱電材料を開発 宮崎大学ら

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宮崎大学は2021年7月28日、同大学の研究グループがユタ大学、トヨタ自動車との共同研究で、身の回りの熱を効率よく電気に変換する環境にやさしいCu2ZnSnS4(CZTS)熱電材料の開発に成功したと発表した。有毒な元素や高価なレアメタルを含まない硫化物材料での最高値となる熱電性能指数ZT=1.6を500℃付近で達成したという。

「熱」は身近なエネルギーだが、実はロスが大きく、日本中で発生している年間の廃熱量は原子力発電所数百基分の発電量に相当すると試算されている。熱電変換技術は、工場や自動車から排出される廃熱を再資源化する技術として注目されているという。

PbTeやBi2Te3が熱電材料として知られているが、有毒元素やレアメタルを含んでいる。さらに実用化するための指標として1以上の熱電性能指数ZTが求められ、達成できている材料が限られてきた。

再生可能エネルギーの代表格である太陽電池と熱電発電を比較すると、太陽電池のエネルギー変換効率が10~15%であるのに対し、熱電発電は5~10%であり、世の中に普及させるためには変換効率が低い点が研究課題となっている。

研究グループは、地殻中に豊富に存在し、毒性の低い元素で構成された環境調和型Cu2ZnSnS4(CZTS)に注目。この材料は同大学が次世代“太陽電池”材料として研究を続けており、世界で初めて大型で高品質なCZTS単結晶成長に成功している。単結晶を用いた信頼性のある基礎研究から太陽電池応用を進めてきたが、変換効率が10%以下であるという問題があった。

単結晶と多結晶の比較

基礎研究を通して、元素周期表で隣同士であるCuとZn元素がCZTS中で容易に入れ替わり、材料中の元素の並びが不規則になるため電気特性に影響することがわかった。この不規則性はCZTS材料の固有の特性で制御が困難だったが、この不規則性が逆に熱を通しにくい特性につながるというアイデアから、熱伝導率を測定。単結晶であっても1W/mK以下と低い値が観測された。

Cu2ZnSnS4熱電変換材料の結晶構造と不規則性

優れた熱電材料は高い発電量を得るために電気を良く流すことが求められる一方、発電に必要な温度差を維持するために熱を流し難いことも求められる。しかし、同時制御は難しい現実がある。

研究グループは、電気を通しやすく、熱を流しにくいCZTS単結晶を熱電材料として取り扱い、Cu2ZnSnS4熱電材料の開発に成功。構成元素組成などをチューニングすることにより、環境調和した硫化物熱電材料で世界最高値の性能指数ZT=1.6を500℃付近で達成した。

熱電材料開発では、温度差を発生させるためにセンチオーダーのサンプルサイズが必要だが、3種類以上の元素で構成される材料はこの大きさで均一の単結晶を得ることは難しい。針状結晶では信頼性のある熱電評価が不可能で、硫化物熱電材料としての世界最高値の無次元性能指数ZT=1.6は、熱電評価に対応できる単結晶の存在によって発見されたという。

従来の針状結晶

研究グループの単結晶

同大学は環境調和した熱電デバイスの応用に向けて研究を進めており、CZTSの高いZT値から熱電変換効率15%以上が期待できる。さらにCZTSの熱電材料としての性能を向上させ、将来的には2を超えるZTを目指す。

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