UCバークレー、安価で製造容易な二酸化炭素固定材料を考案

Image courtesy of Haiyan Mao and Jeffrey Reimer, UC Berkeley

カリフォルニア大学バークレー校(UCB)を中心とする研究チームが、工場や発電プラントから排出される二酸化炭素を高効率で吸着除去できる、高分子メラミンをベースとした固体多孔質材料を開発した。これまでに提案されてきたCO2固定化材料と比べて、安価で入手しやすい原料から容易に製造でき、エネルギー効率が高く大量のCO2の吸着が高速で可能であり、繰返し安定性にも優れ、広汎な産業分野における実用化が期待されている。研究成果が2022年8月3日に『Science Advances』誌に公開されている。

温室効果ガスによる人為的な気候変動を止めるには、化石燃料の使用を停止することが究極的な解決策であるが、中間的戦略として、産業や発電プラント、自動車などから排出されるCO2を捕捉固定して地下に貯蔵したり、有益な物質に転換することが模索されている。

アメリカのエネルギー省は、CO2の固定、分離、再利用に向けた先進技術を開発して、排出ガスにおけるCO2固定化目標90%を達成する、総計31.8億ドルのプロジェクトを立上げている。物理化学的なCO2固定化技術としては、これまでにアミンなどのアルカリ性溶液にCO2を選択的に溶解させる化学吸収法や、ゼオライトなどの吸着剤にCO2を吸着させる物理吸着法などが提案されてきた。2015年にはUCBの他の研究チームが、従来よりも効率的にCO2を吸脱着できる新しい材料として、多孔質の金属有機構造体(MOF)を考案している。だが、いずれの場合も、使用する原料や製造方法が高コストであったり、固定したCO2を再利用するための吸脱着に多大なエネルギーが必要であるなどの課題があり、実用化には遠いのが現状だ。

研究チームは、安価で入手し易い資源から製造できるCO2固定物質を考案することを目標として、安価な食器や家庭用品、プラスチック、コーティングなどに広く使われている高分子メラミンに着目した。メラミン粉末をホルムアルデヒドで化学修飾処理することにより、ナノスケール多孔質が形成されてCO2を吸着することを確認した。更にDETA(ジエチレントリアミン)を付加することによって、CO2の吸着捕捉性能が更に向上し、また重合反応過程でシアヌル酸を加えると、形成される孔サイズが増大してCO2の固定化効率が劇的に改善することを見出した。

キログラム単位の実験の結果、常圧で1.82mmol/gと高いCO2吸着容量を示すことが判り、実際の排出ガスを模擬したガスにおいて殆ど全てのCO2を約3分以内に吸着することに成功した。従来のアミン溶液を利用した化学吸収法では、固定したCO2を再利用のために再放出するには120~150℃に加熱しなければならないが、メラミン系多孔質物質は80℃で再放出できるため、大幅な省エネルギーが実現できる。

研究チームは、メラミン系多孔質物質におけるCO2吸脱着メカニズムを、固体核磁気共鳴装置などを用いて原子レベルで詳細に解明しており、CO2固定化効率を更に向上して、効率的で量産可能、繰返し安定性に優れる大容量のCO2固定化技術を追求する計画を立てている。

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A simple, cheap material for carbon capture, perhaps from tailpipes

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