理化学研究所(理研)は2022年9月26日、希土類金属触媒を用いてポリイソプレンのミクロ構造を制御することで、優れた自己修復性を示す機能性ポリマーを開発したと発表した。
自己修復性材料は、2種類のモノマーの共重合や多段階で合成されるものが知られているが、入手が容易な1種類のモノマーからの合成にはこれまで成功していなかった。
今回の研究では、希土類金属触媒を用いてイソプレンを重合してさまざまなミクロ構造を持つポリイソプレンを合成。イットリウム触媒では3,4-ユニットを持つポリイソプレン、立体的に小さい配位子を持つスカンジウム触媒1を用いた場合は、シス-1,4-ユニットを持つポリイソプレンが得られた。また、立体的に大きな配位子を持つスカンジウム触媒2を用いると、3,4-ユニットとシス-1,4-ユニットの比が約7:3となるポリイソプレンを得た。
得られた各ポリイソプレンは、ミクロ構造の違いによってそれぞれ異なった熱および機械物性を示すが、特にスカンジウム触媒2によって合成されたものは、ガラス転移点-10℃で伸び率約20倍、破断強度約2MPaという優れたエラストマー物性を示した。
さらに、優れた自己修復性を持ち、外部から刺激やエネルギーを加えなくても切断面を密着させるだけで自己修復する(冒頭の画像)。引張試験で評価すると、48時間程度で引張強度が回復することが分かった。また、大気中だけではなく、水や酸、アルカリ性水溶液中でも3日程度で自己修復する。ポリイソプレンを水素化することでさらに優れた自己修復性を示す。
今回の研究の成果は、大気中の他に水や酸、アルカリ性水溶液中などのさまざまな環境下で、自己修復可能かつ実用性の高い新しい機能性材料の開発に貢献することが期待できるという。