名古屋大学、有機塩触媒によるエステルの実用的合成法を開発

パーム油からバイオディーゼルを効率的に合成

名古屋大学は2018年2月27日、金属を含まない有機塩触媒によるカルボン酸エステルの効率的合成法を開発したと発表した。これまで触媒的な合成が困難だった高極性な糖類のエステルなどを効率的に高純度で製造できるようになり、医薬品、化粧品、油脂、ポリエステルなどの工業的製造法への応用が期待できる。

従来のエステル合成法では、触媒の多くはチタン(Ti)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)など毒性や着色の問題が懸念される金属塩が使われており、生成するエステルに触媒由来の金属種が残留するという問題がある。また、医薬品や化粧品で用いられるエステルは高極性のものが多く、金属イオンを強く吸着して触媒活性を阻害するため、これらのエステルには金属塩触媒の使用は不向きだ。

今回同大学の研究グループは、金属塩触媒が不向きな極性の高い基質に対しても適用できる有機塩触媒を開発するため、メタルフリーのアンモニウム塩触媒に着目した。最も高い触媒活性が期待されるのはアンモニウムアルコキシド[R4N+][OR2]だが、化学的に不安定で触媒として直接取り扱うことは困難であるため研究を重ねた結果、実用性に優れた極めてシンプルなアンモニウム塩触媒[R4N+][OCO2Me]の開発に成功した。

この有機塩触媒を用いることで、幅広い配位性基質に対して高収率で目的生成物が得られた。また一般的な金属塩触媒とは異なり、使用できる溶媒は幅広い。さらに低温でも高活性であり、これまで例のないL-α-アミノ酸エステルの直接的なエステル交換反応にも成功した。不安定な金属塩触媒を扱う時のような特別な技術を要することもない。反応液を冷却処理して反応液と触媒成分を分離できることから、触媒回収再利用も可能となり実質の触媒量を低減できる。

また今回の研究により、アンモニウム塩触媒の窒素原子をリン原子に置換したホスホニウム塩触媒も似た触媒活性を示すことがわかった。両者を比較すると、触媒活性はアンモニウム塩の方が高く、安定性はホスホニウム塩の方がよい。この活性の差を利用して、ジオール(ヒドロキシ基を2つ持つ化合物)の選択的メタクリレート誘導体を高収率で作り分けることができた。さらに、環境負荷の低い燃料であるバイオディーゼルもパーム油から高収率で合成できた。

今回の触媒は、取扱いが容易で、回収して再利用でき、高い反応再現性を示すほか、スケールアップにも対応できる。また従来法に比べ、適用可能な溶媒の種類や合成できるエステルの種類が大きく拡大している。安全で利便性が高く、低環境負荷のエステル合成法として、化学工業への展開が期待される。

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