自己修復するアルミニウム合金を開発――疲労寿命を25倍に延長

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オーストラリアのモナシュ大学の研究チームが、アルミニウム合金の疲労寿命を最大25倍向上する手法を考案した。自動車や航空機に使用される前に、予備的な振動応力を与える「トレーニング処理」により、疲労亀裂の発生源になる粒界隣接部の無析出物帯に、応力誘起の微細析出物を生成して強化し、疲労亀裂の発生を抑制するものだ。研究成果が、2020年10月15日の『Nature Communications』誌に公開されている。

アルミニウム合金は、鋼などに比べて著しく軽量であり、また錆や腐食に対する抵抗性が高いことから、航空機はもとより最近では自動車にも使われるようになってきている。しかし、重要な欠点の1つは疲労破壊特性が劣ることであり、航空機では疲労亀裂が発生、伝播することを前提として、多数の部品を事前に計画的に交換しているのが現状だ。

アルミニウム合金の場合、疲労亀裂は結晶粒界隣接部に必然的に存在する無析出物帯(PFZ)から発生する。製造過程の時効熱処理において、析出サイトが多数ある結晶粒界に優先的に合金元素が拡散するため、粒界隣接部に合金元素の空白地帯が生成する。この空白地帯は析出物が生成しないPFZとなるため、粒界から離れた粒内マトリックスと比較して低強度となり、実際の使用段階における振動応力の下でひずみが集中し、疲労亀裂発生源になることが知られている。

研究チームはアルミニウム合金の疲労破壊特性を向上する研究を推進する過程で、初期の微細組織におけるPFZを改善することにチャレンジした。最近の研究において、アルミニウム合金に振動応力が負荷される場合、不可逆的な転位運動に起因して空孔が生成し、空孔を利用した合金元素の拡散が室温においても活発化して、析出が生じることが判ってきた。そこで、熱処理過程においてPFZが完全に形成される前に時効を停止し、粒界隣接部にもまだ合金元素が残存する状態で、意図的に振動応力を負荷することによって析出を促進し、さもなければ低強度のPFZになってしまう部分を強化する手法を考案した。

即ち、標準的なピーク時効に達する前の亜時効状態で、数百サイクルの少し強めの予備的振動応力を与える「トレーニング処理」を行うことで、疲労亀裂の発生源になるPFZに応力誘起の微細析出物を生成し、高強度化することで疲労亀裂発生を遅らせようとするものだ。実際、粒界隣接部に1nmオーダーの微細な析出物が高密度に生成することを確認するとともに、標準的なピーク時効処理材に比べて、引張試験における静的引張強度は少し低いものの、疲労寿命は最大25倍延長し、疲労強度は引張強度の最大1/2に向上することが判った。

研究チームは、今回のような特別な「トレーニング処理」ではなく、実際的使用の初期段階で、このような応力誘起の微細析出による自己修復効果も期待できると考えている。また「この手法は普遍的であり、PFZを発生する他の析出硬化型合金にも適用できる」と、説明している。

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Monash engineers improve fatigue life of high strength aluminium alloys by 25 times

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