フロー型マイクロ波合成装置で有機材料の高効率合成が可能に――産総研など、低極性溶媒でも加熱高温化を可能とした連続合成装置を開発

産業技術総合研究所(産総研)は2018年4月12日、サイダ・FDSと共同で、以前より両者で共同開発してきたフロー型のマイクロ波加熱装置を改良し、トルエンやキシレンなどの低極性溶媒でも加熱高温化を可能とした連続合成装置を開発したと発表した。

近年、チューブなどの流路に溶液を流しながら連続的に化学反応を起こすフロー合成が注目を集めている。また、特定の物質を選択的かつ急速に加熱できるマイクロ波加熱が、有機合成の新たな技術として注目されている。しかし、流路に対する均一なマイクロ波照射や、マイクロ波エネルギーの効率的な利用が困難だったため、小さな反応容器を用いたバッチ反応での利用が主流だった。

今回研究チームは、加熱で変化する溶媒の誘電特性に合わせてマイクロ波の周波数をフィードバック制御し、効率的な連続合成が行えるフロー型のマイクロ波合成装置を開発。この装置では共振周波数をマイクロ波加熱に使用できる周波数(ISM周波数帯)域内に保ったまま、従来の有機合成で広く利用されているトルエンやキシレンなどの低極性溶媒の加熱ができる。

同チームは、有機半導体材料として知られるフラーレン誘導体の連続合成に取り組み、従来のフラーレン誘導体合成では用いることができなかった非ハロゲン系溶媒のo-キシレンを用いて、1時間の運転で0.74gの連続生産に成功した。これは従来のマイクロ波加熱バッチ反応(0.04g/h)の18倍、ヒーター加熱フロー反応(0.07g/h)の10倍の生産性向上であり、低コスト化への貢献が期待できるという。

今後は、滞留時間を延ばし生産量を増やすようフロー型マイクロ波合成装置の改良を進めるとともに、この装置を用いたほかの有機材料の高効率合成手法を開発する予定だという。さらに従来のヒーターによる加熱では困難だった有機合成反応にも取り組むとしている。

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