- 2018-5-2
- 化学・素材系, 技術ニュース
- 3次元マイクロ流体表面増強ラマン散乱センサー, SERS, フェムト秒レーザー加工技術, 理化学研究所
理化学研究所は2018年5月1日、全フェムト秒レーザー加工技術を利用して、ごく微量の有害物質をリアルタイムで検出できる「3次元マイクロ流体表面増強ラマン散乱(SERS)センサー」を開発したと発表した。
表面増強ラマン散乱(SERS)は、ナノサイズの金属構造表面に吸着したごく微量の物質を検出する手法。バルク基板上のラマン散乱と比較して、実験上、検出感度を106~108倍に増強できる。
ただし、ごく微量の物質をリアルタイムに検出するには、測定物質をSERSセンサーへ連続的に供給する必要がある。そこでマイクロ流体チップ内の流路内壁にSERSセンサーを集積し、流路へ測定物質を送り込むやり方が試みられてきた。
しかし、ほとんどの場合、マイクロ流体チップの基板として用いられているのはポリジメチルシロキサン(PDMS)。PDMS自体がラマン散乱信号を発生するため、検出したい有害物質のラマン信号と干渉するという問題があった。
そこで理化学研究所の研究チームは、PDMSの代わりに、ラマン信号を発生しないガラスを使用。3次元マイクロ流体構造をガラスマイクロチップ内に構築し、さらに流体構造内部の所望の位置に、金属薄膜を選択的に堆積。そして堆積した金属薄膜に、SERSセンサーとして機能する金属のナノドット周期構造を形成した。
その結果、ガラス基板上でのラマン散乱と比較して、7.3×108倍のラマン散乱強度の増強が得られるようになった。10ppb(1ppbは10億分の1)の検出感度で、異なる濃度のカドミウムイオン(Cd2+)をリアルタイムで検出できたと報告している。
研究チームが開発した技術は、通常のフォトリソグラフィーを用いた半導体プロセスと比較して、加工ステップ数を大幅に削減できた。半導体プロセスでは20以上のステップが必要なのに対して、全フェムト秒レーザー加工技術では7ステップでマイクロ流体SERSセンサーを作製できる。
今回の成果によって、大気、水、土壌、食品などに含まれるごく微量の有害物質を、その場でリアルタイムに検出する技術への応用が期待できる。病気の早期発見・診断等医療用チップとしての利用も視野に入れているということだ。