東工大など、貴金属や稀少金属を用いずにCO2を還元する高効率の光触媒を開発

カーボンナイトライドと鉄錯体を組み合わせた光触媒によるCO2還元反応

東京工業大学と科学技術振興機構(JST)は2018年6月12日、同大学などによる研究グループが、有機半導体材料と鉄錯体から成る光触媒に可視光を照射すると、二酸化炭素(CO2)が一酸化炭素(CO)へ選択的に還元されることを発見したと発表した。貴金属や稀少金属を用いずに従来の光触媒と同等の性能でCO2を有用な炭素資源に変換できる。

金属錯体や半導体を光触媒として用いてCO2を還元資源化する”人工光合成”とも呼ばれる技術は世界中で開発が進められている。しかしこれまで開発されてきた高効率のCO2還元光触媒は、ルテニウムやレニウム、タンタルなどの貴金属や稀少金属を含む錯体や無機半導体が用いられており、莫大なCO2量を考えると、地球上に多量に存在する元素だけを用いた光触媒を構築する必要があった。

今回同研究グループでは、有機半導体であるカーボンナイトライドを、鉄と有機物で構成される錯体と融合して光触媒として用いることで、常温常圧の条件下で可視光の照射によりCO2を高効率にCOへと還元し、資源化することに成功した。カーボンナイトライドが可視光を吸収し、還元剤から触媒である鉄錯体への電子の移動を駆動。その電子を用いて鉄錯体はCO2をCOへと還元する。

性能の指標となるCO生成におけるターンオーバー数(触媒反応の活性点が何回機能したかを表す指標)、外部量子収率(反応に用いることができた光の量の割合)、CO2還元の選択率(全ての生成物量に対する目的生成物量の割合)は、それぞれ155、4.2%、99%となった。これらの値は、貴金属や稀少金属錯体を用いた場合とほぼ同程度で、すでに報告されている卑金属や有機分子を用いた光触媒と比べて10倍以上高かった。

今回の研究により、炭素、窒素、鉄といった地球上に多量に存在する材料を用いて、太陽光をエネルギー源とした高効率なCO2還元資源化ができることが実証された。今後は、光触媒としての機能をさらに向上させるとともに、水を還元剤として用いることのできる酸化光触媒との融合が課題となる。

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