剛性と振動吸収性を併せ持つ新材料を開発――交通手段の快適性向上の可能性

イギリスのサリー大学機械工学科のBetar Gallant准教授らが2018年10月1日、金属と同じくらい硬いにも関わらず、強い振動に耐えられる柔軟性を併せ持つ新材料を開発したと発表した。この革新的な材料は自動車製造業界を変える可能性も持つという。研究成果は『Scientific Reports』に論文「Damping of selectively bonded 3D woven lattice materials」として2018年9月21日に発表されている。

これまで振動を吸収する振動吸収性と、高い強度を備えた剛性を併せ持つ素材を作ることは難しいと考えられていた。実際、ゴムに代表されるバルク減衰材料は、比較的低い剛性を示す。その一方で金属やセラミックなどの高い剛性を示す素材の振動吸収性は、ほぼ皆無と言ってもよい。今回発表された研究では、3次元織物複合材料シートを利用することで、剛性と振動吸収性を併せ持つ材料の開発に成功した。

具体的には、直交する縦と横の金属ワイヤーを交互に何層にも積層し、層の上下をZ軸ワイヤーで包むように通した三次元織物格子材料(3D woven lattice materials)を作製、その格子接合部を選択的にロウ付けして、剛性を持たせている。ここで、選択的にロウ付けすることで自由に動く格子が存在するため、材料内部で振動を吸収するようになる。

研究チームは、この多孔質材料の減衰係数はポリマーに匹敵し、使用温度の上限もはるかに高いことを示した。また、低周波振動を通過させて高周波振動を減衰させる性質があるため、低域フィルター材としても利用できる可能性がある。

サリー大学の材料構造学科のStefan Szyniszewski准教授は「剛性と振動吸収性の両立は不可能だと思われていました。今回、我々が開発した材料は、自動車、鉄道、航空宇宙製造業での応用が期待でき、乗客が移動中に振動を感じない、より快適な輸送手段の開発に貢献するでしょう」と、将来の展望を明らかにしている。

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