新たな2D材料を求めて――データマイニングで金属酸化物系2D材料を探索する手法を開発

ゲルマニウムマンガン酸化物GeMnO3の表面磁気構造は、空間的に変化し(赤色領域は磁化が平面外に向き、青色領域は磁化が平面内に向く)、次世代データ保存技術における活用が期待される。/Source: HZDR / Rico Friedrich

ヘルムホルツ研究機構ドレスデン-ロッセンドルフ(HZDR)を中心とした、ドイツとアメリカの共同研究チームが、グラフェン等とは異なる金属酸化物を基本とした新たな2D材料を探索する理論予測手法を構築した。3D材料ブロックから2D薄膜を分離するのに必要な剥離エネルギーが小さいことに着目し、結晶積層面間の剥離エネルギーを2D材料生成の指標として、金属酸化物系2D材料の幾つかの基本型(プロトタイプ)を設定し、極めて大きな材料データベース上で実存する金属酸化物を探索するものだ。このデータマイニング手法により、新たに28個の金属酸化物系2D材料を予測することに成功した。研究成果が、2022年1月20日に『Nano Letters』誌に公開されている。

グラフェンに代表される2D材料は、優れた物理的および化学的特性の観点から大きな注目を集め、太陽電池やリチウムイオン電池、電界効果トランジスタ、スピントロニクスなどさまざまな分野への応用が期待されている。一般的にグラフェン等2D材料は、異方性を持つファンデルワールス力による弱い結合のため、3D材料ブロックから2D薄膜を分離し易い特徴を持っている。

その一方で、強いイオン結合を持つ金属酸化物を基本とした2D材料が存在することも知られるようになった。イルメナイトFeTiO3やクロマイト(Fe,Mg)Cr2O4などの金属酸化物から合成できる2D材料であり、電子的および磁気的、光学的にユニークな特性を有することから、次世代型コンピューターのデータ保存やスピントロニクス用途における応用開発が期待されている。だが、全方向的に強いイオン結合を形成するため2D薄膜を分離することが難しく、これまで数件の実験例しか報告されてないという。

研究チームは、特定の酸化物だけが容易に2D薄膜を生成できる理由について考察し、一般化された探索指針を導くことにチャレンジした。そこで3D材料ブロックから2D薄膜を分離するのに必要な剥離エネルギーが小さいことが重要であると考え、量子化学や凝縮系物性物理学で広く使われる「密度汎関数理論」を用いて、2D材料として既に報告されている金属酸化物の電子構造を計算し、結晶積層面間の剥離エネルギーが小さい幾つかの結晶構造をプロトタイプとして設定した。

次に、デューク大学において開発/運用されている、物質材料の第一原理計算結果を集積する極めて大きな材料科学データベース「AFLOW Materials Database」を利用して、このプロトタイプに適合する金属酸化物を探索した。このデータベースは、最も大きな材料科学データベースであり、現時点で約350万の化合物を識別し、7億以上の材料特性を計算している。

これにより研究チームは、最終的に8個の2元系酸化物および20個の3元系酸化物を、2D材料の有力な候補として抽出することに成功した。これらの候補酸化物の電子的および磁気的特性を研究することが可能であり、例えば、ゲルマニウムマンガン酸化物GeMnO3などのユニークな表面磁気構造は、次世代型コンピューターにおけるデータ保存やスピントロニクス用途に有望だと期待している。

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