日立金属は2018年12月3日、地下資源掘削機器向けに、高い耐食性と耐土砂摩擦性を併せ持つ硬質粒子分散型クロム基合金を開発したと発表した。掘削機器の部品表面にこの合金を肉盛りすることで、機器の長寿命化や保守作業軽減につながるという。
油井の原油回収に使用される人工ポンプ機器の摺動箇所には、従来、耐食性および耐土砂摩擦性に優れたコバルト基合金などの表面強化材料が用いられている。しかし従来の表面強化剤は、耐土砂摩擦性を向上させるための硬質粒子の形成過程で、金属生地の耐食性を担う元素が減少するために、耐土砂摩擦性が高い合金ほど耐食性が低くなるという課題があった。
また、近年の採掘速度向上、大深度採掘や、厳しい腐食環境下での採掘によって、部品寿命が短くなっているという問題もあった。
今回の開発では、日立製作所が開発した耐食性に優れたクロム基合金をベースにして、硬質粒子を分散させることで耐土砂摩擦性にも優れた合金を開発した。コバルト基合金と比較して、10倍以上の耐食性と2倍以上の耐土砂摩耗性を持つことを確認。さらに、溶接施工後も割れが生じないことも確認したという。
今後は、油井などの過酷な環境下で使用される機器や部品への幅広い適用に向けて実証実験を進め、実用化を目指す。