ムール貝を模倣した生体材料を利用――油汚染や排水を浄化する研究

パエリヤやパスタ料理の食材としてポピュラーなムール貝は、「足糸(そくし)」と呼ばれる細い繊維で船底に張り付き、地中海から世界の海へ広がったといわれている。ムール貝は船底にダメージを与える厄介な密航者だが、これを水の浄化に応用する研究が、中国の中山大学・南昌大学を中心に行われている。

ムール貝は、細く、驚くほど丈夫な足糸の房をつかって岩に付着し、強い流れと波に耐えている。足糸は、DOPAと呼ばれるアミノ酸を含むタンパク質で出来た、いわば天然の接着剤だ。これを模したバイオミメティック(生体模倣)材料「ポリドーパミン(PDA)」は、コーティング材として医療分野などでの利用が進められている。

科学ジャーナル「Matter」に掲載されたレビュー論文によれば、油を吸着するオイルスポンジの代わりにPDAコーティングした薄膜あるいは金属製メッシュを使用すれば、容易かつ連続的な油水分離処理が可能になる。また、PDAでコーティングした薄膜は高い吸着性を持ち、産業排水から重金属や有機染料を除去するのにも極めて有効だという。

この方法は、アルカリ性の条件下で不安定な物質には適用できない、PDAの沈着に時間が掛かるなど、いくつかの課題が残っているが、新たな環境技術として期待されている。

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Mussel-Inspired Surface Engineering for Water-Remediation Materials

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