- 2024-1-31
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新潟大学は2024年1月30日、同大学と東京大学生産技術研究所、信州大学、コロラド大学ボルダー校の研究グループが、新反応性物質を用いた炭酸ガス熱分解に成功したと発表した。
近年、CO2の排出量削減に向けて、炭酸ガスの利用に関する研究が進んでいる。
太陽光を用いた炭酸ガスの利用に関しては、太陽光発電に基づく水電解で水素を製造し、炭酸ガスと反応させてメタン合成するメタネーションが有望視されているものの、未だ実用化には至っていない。
新潟大学とコロラド大学ボルダー校は、キセノンランプによる集光を用いた室内実験や、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が有する太陽炉を用いた実験を実施した。
セリア(CeO2)やヘルシナイト(FeAl2O4)のフォームデバイスを反応性物質として用いることで、炭酸ガスを酸素と一酸化炭素に分離することに成功している。
実験では、まず高温にした反応器内にアルゴン(Ar)を流し込み、反応性物質から酸素を除去した。その後、反応器内の温度を低下させて炭酸ガスを流し込み、酸素を失った反応性物質によって炭酸ガスを還元、一酸化炭素を発生させている。
このような集熱反応実験に加えて、東京大学がミクロ熱流動解析を、新潟大学がマクロ集熱反応器解析を、信州大学がシステム解析をそれぞれ実施。結果を相互に比較することで、実際のプラントシステムの性能が高精度で予測可能となった。
同発表によると、同シミュレーション技術を用いてプラントを解析することで、セリアにおける太陽光から合成燃料までの総合変換効率を10%以上に向上できる見通しだという。これは、従来の実績値の2倍以上に当たる。
また、ヘルシナイトがセリアの2倍以上の反応活性を示すことも判明。新しい反応物質としての将来性の高さを確認した。
セリアは、原料のセリウム(Ce)がレアアースであるためコストが高い。一方で、ヘルシナイトは安価な鉄(Fe)とアルミニウム(Al)から製造できるため、製造コストの低減が期待できる。
今回の研究は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が助成する「炭酸ガス分解用ソーラー集熱反応器の国際共同研究開発」の一環として実施された。
新潟大学、東京大学および信州大学は、同事業が終了した後も、実証プラントの建設や反応物質、集光系および集熱系の実用化、フォームデバイス単独での実用化などを進める計画となっている。
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