様々な設計への応用が広がる折紙工学――折り紙による双曲放物面の構造特性を解析

折り紙で鶴を作ったことがある人は多いだろう。折り鶴ほどではないにせよ、一枚の紙を山・谷・山・谷と折り込んだ「双曲放物面」は、折り紙愛好家の間でも良く知られている。米ジョージア工科大学と東京大学の研究チームは、折り紙から作られる双曲放物面の構造特性を理解するための理論モデルを作成し、実験と比較した。形状の双安定性を利用した多機能デバイスやメタマテリアルの作製につながるもので、研究結果は2019年9月17日付けの『Nature Communications』に掲載された。

1枚の紙から様々な形を作る折り紙は、いまや「ORIGAMI」として世界中に知られる存在になっている。形の美しさだけではなく、構造物の伸縮性や剛性設計など、様々な設計に応用できる折紙工学への期待は大きい。

平らな1枚の紙を同心の正方形とその対角線に沿って蛇腹に折って広げると、対角線上に幾何学的双曲放物面に似た面が現れる。研究チームは、この形状が幾何学的双曲放物面と同じ物理的特性を持つことを確認し、またその折り目がパターンの形成にどのように寄与するかを調べた。

「我々が発見した中で非常に興味深かったことの1つは、同心正方形の折り目のオフセットが一様でなくても、双曲放物面が折れるということだ」、とジョージア工科大学の元大学院生で現在はカリフォルニア工科大学のポスドクであるKe Liu氏は語る。正方形の一部が非常に近接し、ほかの正方形は離れていても全体的には双曲放物面になるということが分かった。

一方で、折り目の不均一性は、ほかの特性を変化させるだろうと指摘している。理論的には、折り紙の角を押して双曲放物面にするときに必要なエネルギーや応答性も折り目の間隔を変えることで調整できるという。「未来のロボティクスやほかの電子機器の設計に、この種のスナップ動作が利用できるだろう」と、Liu氏は語る。

また、双曲放物面が2×2の配列に並ぶように折り込んだところ、モデルでは32種類の安定した形状を示した。同研究チームの東京大学の舘知宏准教授も、「この折り方は刺激応答性メタサーフェスやスイッチとしての用途に有望だ」と、その将来性を語る。

また、「双曲放物面は、世界中の建築デザインにおいて利用されてきた印象的なパターンだ」と、ジョージア工科大学のGlaucio Paulino教授。折紙工学においてもその形状は構造的な双安定性を持つことから、「エネルギートラップやマイクロエレクトロニクスデバイスで使われるメタマテリアルに活用できるだろう」と、期待を込めている。

関連リンク

Hyperbolic Paraboloid Origami Harnesses Bistability to Enable New Applications

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る