窒化ガリウム高電子移動度トランジスタの放熱効率を高めるダイヤモンド膜の形成に成功 富士通ら

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富士通と富士通研究所は2019年12月5日、気象レーダーなどのパワーアンプ(増幅器)に使用されている窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)(以下、GaN HEMT)の表面に、放熱性の高いダイヤモンド膜を形成する技術を世界で初めて開発したと発表した。

レーダーシステムに用いるトランジスタは、長距離対応にともなう高出力化のため発熱量が増大する。一方、GaN HEMTの高出力動作時は、内部温度の上昇により性能が劣化するため冷却装置が必要となるが、高価かつ空調設備も含めた全体システムが大型になり設置場所が制限されるため、冷却装置の簡素化や小型化が課題となっている。冷却装置を小型化/簡素化するためには、GaN HEMTからの効率的な放熱が重要となる。富士通は、2017年に開発済みのGaN HEMTの基板と単結晶ダイヤモンドを常温で接合する技術を用いて、GaN HEMTの裏面側から効率的に放熱させることに成功しているが、より高い放熱効果を得るためには、GaN HEMTの裏面だけでなく、表面も放熱性に優れたダイヤモンド膜で覆うことで放熱効率を向上させ、GaN HEMTの内部温度を下げることが考えられる。

ダイヤモンドの内部に熱がこもらないよう、効率よく熱を通すためには大きな粒径のダイヤモンド結晶が必要となるが、このようなダイヤモンド膜を形成するには、通常900℃程度の高温が必要なため、ダイヤモンド形成時に下部のGaN HEMTを破壊してしまうという問題があった。また、GaN HEMTが破壊されない低温(~650℃)でダイヤモンド膜を形成しようとすると、ダイヤモンドが形成されなかったり、数百ナノメートル以下の小さいダイヤモンド粒子(ナノダイヤモンド)だけが形成され、さらには各粒子がバラバラの方向を向いた結晶の集合体となり、粒子間での効率的な熱の伝達が阻害されたりする問題があった。

ダイヤモンド形成前後のトランジスタ上面図

今回、GaN HEMTが破壊されない低温(約650℃)において、GaN HEMTの表面に放熱性の高いダイヤモンド膜を形成する技術を開発した。今回開発した技術を用いることで、GaN HEMT動作時の発熱量をダイヤモンド膜なしの場合と比較して約40%低減し、温度を100℃以上低下させることが可能になる。さらに、前述の技術を用いた裏面からの放熱と組み合わせることで、GaN HEMTの表裏両面をダイヤモンド膜で覆うことが可能となり、発熱量を約77%減と大幅に低減できる見込みだという。

これにより、これまで大型の冷却装置が必要だった高性能なGaN HEMTを利用したレーダーシステムの小型化が可能になることから、設置場所の省スペース化と設置数の増加を促進できるという。今後は、気象レーダーシステムや次世代無線通信システムなどへの適用に向けて、高放熱GaN HEMT増幅器の2022年度の実用化を目指すとしている。

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