リチウム同位体を使い、ポケットに入る小型中性子検出器を開発

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ノースウェスタン大学およびアルゴンヌ国立研究所の共同研究チームが、コンパクトで高効率の半導体ベース中性子検出器を考案した。中性子捕獲能力の高いリチウムの同位体6Liを含む半導体を開発したもので、研究成果は『Nature』誌の2020年1月16日号に公開されている。

近年中性子の利用は、国家安全保障に関わる核物質の検出、がん細胞を選択的に破壊する治療、結晶構造解析や宇宙における重元素の起源解明など、様々な分野で重要になっている。そして中性子を検出する手法として、ヘリウムガスなどを中性子捕獲物質として利用する比例計数管や、中性子入射に伴う発光を利用する各種シンチレータが、広く使われている。これらの検出器は概して大きく、携行してその場測定するには適していない。

また、核反応を通じて中性子を捕獲する能力の高いリチウムの同位体6Liが注目されているが、リチウムは水に接触すると激しい反応を起こして粉々になることから、リチウムを半導体に安定的に集積することは極めて困難な課題とされていた。

今回研究チームは、リチウムを安定的に集積するデバイスとして、リチウム・インジウム・燐・セレン化合物を2D状に積層した半導体を見出した。「この化合物(LiInP2Se6)の結晶構造は独特で、この材料の重要な特徴だ。この結晶においてリチウムは積層の内部に存在し、水と接することはない」と、ノースウェスタン大学化学科のMercouri Kanatzidis教授は説明する。

LiInP2Se6において中性子捕獲能力の高い6Li同位体が95%まで濃縮され、非常に高い中性子捕獲断面積を持つ。また、半導体としてバンドギャップ2.06eVの好ましい電子構造を有しており、電荷輸送効率が高く信号応答性に優れ、中性子捕獲に伴って誘起される電気信号を直接検知する。その結果、この半導体を活用した中性子検出器は、非常に弱い線源からの熱中性子でも、ナノ秒以内に高効率かつ高精度に検知することが実証された。

6Li同位体は、自然界ではリチウム元素のうち7.5%存在し、資源的にもある程度豊富で安価と言える。開発された中性子検出器は安定であり、携行してその場測定可能なコンパクトなデバイスとして、また、結晶アレイを構成することにより強力な検出器としても活用できる。更に、ガンマ線のような他の放射線と区別することができ、誤った警報を防止することも可能である。中性子検出ニーズは、安全保障分野に加えて、放射線安全管理、天文学、プラズマ物理、材料科学、結晶学の分野など、今後さらに拡大するとみられており、「この新しい半導体のように、色々なサイズおよび種類の中性子検出器を持つことは重要なことだ」と、Kanatzidis教授は語る。

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