AI開発に関する日本の現状と課題とは――国家戦略として位置づけられるAIエンジニアの育成 [AIでSociety5.0を実現する]

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メイテックネクスト 代表取締役社長 河辺真典氏

~Society 5.0で何が変わるのか。「人工知能」が当たり前になる世界で、エンジニアに何が求められるのか~

画像認識や自動化、自動運転など、人工知能(AI:Artificial Intelligence)に関する求人市場が活発になっていますが、その背景には国が推進する「Society 5.0」への取り組みといった中長期的な動きがあります。本記事は、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストへの取材を通じて、人工知能(AI)の技術動向と転職市場を連載でお伝えしていきます。

第1回目となる本記事では、日本のAI開発の現状と課題について、メイテックネクスト 代表取締役社長の河辺真典氏にお話を伺いました。(執筆:後藤銀河)


――はじめに、「Society 5.0」について、簡単にご紹介いただけますか?

[河辺氏]内閣府の科学技術政策によると、Society 5.0は「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義されています。古代から始まる、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、日本が目指すべき新たな未来の社会として、第5期科学技術基本計画において初めて提唱されました。

Society 5.0では、IoTによってすべての人とモノがつながり、様々な情報が共有されていくことで、新たな価値が生まれるようになります。そしてAIによって、これまで解決が難しかった社会課題が克服できるようになると言われています。この社会的な課題の解決は、日本だけでなく世界の様々な課題解決にも通じるもので、国連のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成にも通じている、とされています。

日本は更なる少子高齢化社会に向けて、社会効率をどう上げていくのかという課題があります。遠隔地や限界集落においても生きていかなければならない。都市においても災害時の対応や医療問題など、解決すべき様々な社会課題があります。こうした世界観の中で、AI技術を使って社会課題を解決しようというテーマが、どんどん出てきているわけです。

Society 5.0では膨大なビッグデータをAIが解析することで社会課題の解決へとつながる。出展:内閣府発行「Society 5.0」

[河辺氏]Society 5.0の実現に向けて、国もAI戦略を打ち立てています。国内のテーマである食料需要の増加や高年齢化への対応、国際競争力を高めるための産業の効率化といった課題をAIで解決し、経済発展と社会課題が両立できる社会を目指しているのです。

もちろんこうした活動を支え、推進していくためには、AI技術に長けた人材を増やす必要があります。内閣の統合イノベーション戦略推進会議が発表した「AI戦略2019」では、2025年に「全ての高等学校卒業生が、理数・データサイエンス・AIに関する基礎的なリテラシーを習得する」という具体的な目標を掲げています。

――完全自動化や画像認識といった切り口、アプリケーションからAIの必要性を感じていましたが、もっと根本的なところから変えようとする大きな流れがあるのですね。

[河辺氏]製造業が既存のものづくり事業にAIを導入するために、AIエンジニアの求人が増えているとか、自動車メーカーが自動運転に取り組んでいるのでAIエンジニアが必要になることもそうですが、今後の世界をより良くするための、国家戦略に基づく流れが根底にあることを理解すべきです。それに伴う法規制、法改正によって、市場が開放されていく、そうした潮流に実は私たちも乗っているわけです。

日本におけるAI技術研究の現状

[河辺氏]河辺氏:先端10分野の技術特許の出願件数の分析に関する記事が、日本経済新聞社から出ています。それによると、2010年当時、技術立国を謳う日本は、先端10分野中5分野で世界トップにいました。AIに関する特許出願件数は、2011年まではアメリカと1位、2位を争っていましたが、その後急伸した中国に大きく水をあけられ、2017年には中国、アメリカ、韓国に次ぐ4位と、完全に抜かれてしまった。(出典:日本経済新聞、2020年2月12日「先端特許10分野、AIなど中国9分野で首位 日米を逆転」)

――特許件数で負けているのは、どのような理由があるのでしょうか?

[河辺氏]日本の企業や大学の取り組みというよりは、先端産業に対する中国の投資額が膨大だということでしょう。過去の国家戦略的な部分での傾注度の違いが表れているのではないかと、個人的に思っています。

こうした状況に陥ってしまったことに対して、国として焦りがあるわけです。AI人材を増やしていかないと、日本は世界で負けてしまう。Society 5.0に基づいてAI技術を普及、浸透させなければという危機感があるのではないでしょうか。

――企業がAIを導入しようとして、Pythonを使えるエンジニアを探しているというだけではないということですね。

[河辺氏]もちろんそうした求人やニーズはあります。ただ、AIは製品開発の延長上にある最適化ツールのような位置づけではなくて、社会をより良くしていくための技術になってきています。例えば、AI技術を用いれば1リットルの原油を無駄なく使い切るためにはどうすればいいのかという、この瞬間に求められているニーズを、時間や空間、供給量などすべてを掛け合わせて、瞬時に演算することができます。地球環境の中で、無駄なエネルギーを排除して、サステナブルな社会を作っていく。AIを活用してどのように社会を最適化していくのか、そういう次元で必要になってくる技術だと捉えるべきでしょう。

AI技術を学ぶということは、テクニカルなスキルを身につける、単なる転職のスキルを上げることには留まらないのです。日本、そして世界中のさまざまな課題の解決に欠かせないAIという技術の必要性は、より高次元の視点で捉えるべきものでしょう。

次回は、「AI開発で求められているエンジニアとは」と題し、Society 5.0を実現するためのエンジニア視点の課題についてご紹介します。

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河辺 真典(メイテックネクスト 代表取締役社長)
生産技術エンジニアとして5年・リクルートエージェントで8年の勤務経験あり。
弊社のコンサルタントは、転職支援のノウハウと業界・技術知識の両方に長けております。
その上で、単に転職先を決めるだけでなく、
転職先でご活躍いただく「失敗しない転職」をご支援するように心がけております。



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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