硫化スズ単結晶の大型化に成功――pnホモ接合で高効率な太陽電池の実現へ 東北大学

東北大学は2020年8月21日、硫化スズ結晶の大型化に成功したと発表した。高効率な太陽電池の実現への突破口となるという。

昨今応用の進むCdTe太陽電池やCIGS系太陽電池は高効率な発電が可能だが、希少金属や有毒元素を含む。一方、硫化スズ(II)は希少金属や有毒元素を一切含まず、地球上に豊富に存在する無毒な元素のみで構成されている。そのことから、環境に優しい次世代太陽電池の材料候補として期待を集めている。

硫化スズ(II)を利用した太陽電池の発電を高効率化する手段としては、伝導特性の異なるp型とn型を組み合わせたpnホモ接合を作り、発電効率を下げる欠陥を減らす方法が知られている。しかし、p型硫化スズが容易に作製できるのに対して、n型硫化スズは容易に作製できないため、pnホモ接合の太陽電池はまだ試作されていなかった。

また、過去20年にわたり、p型硫化スズをn型の異種材料と組み合わせたpnヘテロ接合による太陽電池の試作と改良が繰り返されてきた。しかし、その発電効率は頭打ち状態で、応用には至っていない。そのため、硫化スズ太陽電池の実用化に向けた突破口は、pnホモ接合を容易に試作可能な幅10mm以上の大型のn型硫化スズ結晶を作製することにある。

そこで研究者らは、n型硫化スズ結晶を大型化するため、単結晶を育成するフラックス法に用いるフラックス組成を見直した。そして、組成を大幅に改良した新しいフラックスで育成した結果、硫化スズにn型伝導をもたらすためにフラックスに添加した塩素や臭素のハロゲン成分が、結晶の大型化にも大きく寄与することが発見された。

研究では、この大型化技術を用い、最大で幅24mmにまでn型硫化スズ単結晶のサイズの大型化に成功。得られた硫化スズの構造や電気特性を詳細に調べたところ、高い結晶性、高い電子伝導性、適切なフェルミ準位を備える非常に良質なn型単結晶であることが示された。

n型単結晶の大型化の成功により、pn接合の試作時のハンドリングが大幅に容易になるほか、さまざまなp型層の成膜条件でpnホモ接合を同時に複数個試作できるという。pnホモ接合により、pnヘテロ接合では頭打ちであった状況を一蹴し、硫化スズ太陽電池の開発が大幅に進むことが期待できる。

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