- 2024-7-25
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- Materials Futures, テトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオン, フッ素化ブロック共重合体, ポリヨウ化物, ヨウ化物, ヨウ素, ヨウ素カソード, 三ヨウ化物, 亜鉛, 亜鉛デンドライト, 亜鉛金属アノード, 固体亜鉛ヨウ素電池, 学術, 松山湖材料実験室, 水性電解質, 酸化亜鉛, 酸化還元反応
中国の松山湖材料実験室は、新しい固体亜鉛ヨウ素電池(以下、ZnI2電池)を設計した。デンドライト形成を防ぐことでサイクル寿命を向上させるという。この研究は、固体ZnI2電池による信頼性の高いエネルギー貯蔵実現に有望な見通しを示し、フレキシブルでウェアラブルな亜鉛電池の革新的な概念を表すものだ。この研究は、2024年6月17日付で『Materials Futures』オンライン版に掲載された。
亜鉛の理論容量は820mAh/gと高く、ヨウ素は地殻中に大量に存在している。このことから、ZnI2二次電池は安全でコストがかからず、理論容量の大きい電池として注目されている。しかし、ZnI2電池のサイクル寿命は限られており、商用化の実現には依然として大きな課題が残っている。
水性電解質中で亜鉛電極は熱力学的に不安定であり、常に水素を放出するので、電池は膨張して最終的には故障する。さらに、水性電解質内のヨウ素カソードでは、三ヨウ化物、ヨウ化物、ポリヨウ化物を含む、可逆的な酸化還元反応が頻繁に発生する。酸化亜鉛とテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンの不動態化層は三ヨウ化物とさらに相互作用し、亜鉛アノードへの影響を悪化させる可能性がある。したがって、長寿命のZnI2二次電池を実現するには、亜鉛表面におけるこのような寄生反応を抑制することが不可欠となる。
そこで、研究チームは、長寿命の全固体ZnI2電池を開発するための固体電解質として、新しいクラスのフッ素化ブロック共重合体に着目した。研究の結果、この固体電解質中を循環する亜鉛金属アノードは、フッ化物を豊富に含む安定した固体電解質界面(SEI)層を形成して、亜鉛の水平方向への析出を促進し、セパレーターを損傷して電池故障の原因となる亜鉛デンドライトの成長を防ぐことを示している。
さらに、この固体電解質は三ヨウ化物イオン(I3–)のシャトル問題を効果的に緩和し、電池の寿命を延ばす。この固体電解質を使用して組み立てた対称型電池の電流密度は0.2mA/平方センチメートルで、約5000時間、安定しためっきと剥離が可能だ。
完成したZnI2電池は、0.5Cという優れたCレート性能と、7000サイクル以上(1万時間以上)にわたってほぼ100%のクーロン効率を備えている。また、この電解質は優れたレート性能を示し、20Cの超高電流密度でも可逆容量79.8mAh/gを実現している。
これらの結果は、開発された全固体電池に商用化の可能性が高いことを強調するものであり、デンドライトを形成しない亜鉛金属アノードと、超長寿命の次世代ZnI2電池用フッ素系固体高分子電解質の設計に新たな道を開く。
今後の研究では、コストを抑えながらZnI2電池のより実用的な応用の可能性を探っていくとしている。