高強度レーザー2本による「ペンチ」で反物質を生成する新手法――シミュレーションにより実現可能であることが判明

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Images: Toma Toncian

シミュレーションにより、高強度の2ビームレーザー設備と先進的なターゲット設計を用いれば、電子と陽電子(電子の反粒子)を光のみから生成するために必要な条件を達成可能であることが示された。今回発見されたプロセスでは、反物質のジェットが生成され、非常に効率的に加速される。この研究は、米カリフォルニア大学サンディエゴ校、ドイツ研究センターヘルムホルツ協会ドレスデン・ロッセンドルフ研究センター(HZDR)、スウェーデンのイエテボリ大学によるもので、2021年6月17日付で『Communications Physics』に掲載された。

宇宙での極限的なプロセスの中には、膨大な量のガンマ量子を生成しやすいものがあり、そのガンマ量子はすぐに再び物体化し高エネルギーのペアとなる可能性がある。このようなプロセスは、特に高速回転する中性子星であるパルサーの磁気圏で起こりやすい。また、ブラックホールは、その巨大な引力により、宇宙空間にエネルギー物質を放出させる。

今回、中性子星の近くで見られるこのような状態を将来的に実験室で作り出して研究できるようにするための新しいコンセプトが提案された。このコンセプトの基礎となるのは、マイクロメートル単位の微細なチャネルが十字に交差している小さなプラスチックのブロックだ。このブロックに、2つのレーザーで左右から同時に超強力なパルスを照射する。ブロックは文字通りレーザーの「ペンチ」で挟まれる。

レーザーパルスがサンプルを貫通すると、それぞれのパルスが非常に高速な電子でできた雲を加速させる。この2つの電子雲は、逆方向に伝搬するレーザーと相互に作用し合いながら、全力で互いに向かって突進する。その後に起きる衝突は非常に激しいため、X線よりもさらに高いエネルギーを持つ光の粒子であるガンマ量子を極めて大量に発生させる。

この大量のガンマ量子はあまりにも密集しているため、光の粒子同士の衝突は避けられない。アインシュタインの有名な公式「E=mc2」によれば、光エネルギーは物質に変化する。この場合、主に電子と陽電子のペアができるはずだ。

このプロセスが通常とは異なり特別である理由は、非常に強い磁場が伴うことだ。この磁場は、陽電子を集中させてビームにし、陽電子を強力に加速させることができる。わずか50μmの距離で、粒子のエネルギーは1ギガ電子ボルト(GeV)に到達するはずだ。通常、これほどのエネルギーに到達させるには本格的な粒子加速器が必要となる。

このコンセプトが実際にうまくいくか確かめるために、研究チームは精巧なコンピューターシミュレーションでテストを実施し、その結果、原理的には実現可能であることが分かった。シミュレーションでは、最後に生成された陽電子が高エネルギーのビームになっていた。さらに、シミュレーションによれば、レーザーを2つ同時照射するこの手法は、1つのターゲットにレーザーパルス1つだけを照射する従来の手法に比べて、最大10万倍の陽電子を生成できるという。

この手法では、他のコンセプトほど強力なレーザーは必要ではないが、実行できる場所は世界中にほとんどない。最も適しているのは、ルーマニアの極限レーザー核物理研究所(ELI-NP)で、この施設はターゲットに向けて同時に照射できる2つの超高出力レーザーを備えている。しかし、必須となる予備テストは、世界で最も強力なX線レーザーである欧州XFEL(X線自由電子レーザー)があるドイツのハンブルクで事前に行われる可能性がある。

関連リンク

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Dominance of γ-γ electron-positron pair creation in a plasma driven by high-intensity lasers

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