- 2024-7-24
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- DGIST(大邱慶北科学技術院), POSTECH(浦項工科大学), ハイブリッドポリマー, ポリウレタン(PU), ポリジメチルシロキサン(PDMS), マイクロ発光デバイス, 伸縮性ハイブリッドポリマー, 伸縮性電子デバイスシステム, 学術, 相互侵入ポリマーネットワーク(IPN : Interpenetrating Polymer Network), 電子デバイス
韓国の大邱慶北科学技術院(DGIST)と浦項工科大学(POSTECH)の研究チームは2024年6月24日、電子デバイスに使用できる新素材として、伸縮可能なハイブリッドポリマーを開発したと発表した。
従来、柔軟性を持つ素材は、ディスプレイ装置、ウェアラブル機器、ヘルスケア機器など、様々な分野への応用が期待されてきた。しかし既存の素材では、伸縮や屈曲などの変形の力や外部からの衝撃を受けた場合、電気的な機能が損なわれるという問題があった。
素材の柔軟性と電気的な機能をどう両立するか、という課題に対して研究チームは、伸縮性を持ったハイブリッドポリマー素材を発案した。素材のひずみを分散させる構造と伸縮性を備えることで、変形や衝撃に対して安定して動作する電子デバイスの開発に着手した。
具体的には、研究チームは「相互侵入ポリマーネットワーク(IPN : Interpenetrating Polymer Network)」という構造で、素材の伸縮性を確保した。IPNは、2種類以上のポリマーを、物理的/化学的に「架橋」した3次元ポリマー構造だ。
個々のポリマーは、化学結合することなく、分離しないような構造をつくっている。ポリマー同士は、物理的な絡み合いを誘発することで優れた機械的界面を形成し、変形に強い性質を維持する。研究チームは、弾性率の異なるシリコン系ポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)とポリウレタン(PU)で、伸縮性ハイブリッドポリマーを作成した。
次に、作成した伸縮性ハイブリッドポリマーを使って、シート状の基板を試作した。その上に、無機材料でできた高効率の伸縮性電子部品を積層することで、シート状の伸縮性電子デバイスを実装した。
この伸縮性電子デバイスは、伸縮や屈曲などの力を受けた際に、一点に発生するひずみを分散してデバイスの機械的なひずみを軽減し、高い形状安定性を保持する。研究チームは、既存の素材で懸念された物理的損傷や性能劣化を、この素材は大幅に軽減するとしている。
研究チームによると、この伸縮性電子デバイスシステムを応用したマイクロ発光デバイスやヒーターなどは、動作安定性の検証が完了している。今後は、ヘルスケアやウェアラブルなど様々な産業分野への応用に向けて、本研究をさらに強化していくとしている。