日本電気硝子は2020年8月26日、5G通信に用いられる部品やデバイスに適した誘電正接の低いLTCC用材料「MLS-23」「MLS-51」「MLS-63」の3タイプを開発し、販売を開始したと発表した。5Gに対応し、業界最小の誘電正接を有し、通信の伝送損失を抑制して効率的な通信を提供する。
LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics、低温同時焼成セラミックス)は、ガラス粉末とセラミック粉末の複合材料で、1000℃以下の低温で焼結できる。電気伝導率の高い銀導体と同時焼結し、多層化することにより複雑な高周波部品を製造できる。
ミリ波領域といわれる28~40GHzの高い周波数を利用する5G通信は、信号を処理する部品やデバイス(回路基板、フィルタなど)にさまざまなLTCC基板が使用されている。それらにおいては、信号が周波数、誘電正接に比例して減衰し、通信品質が低下するため、特にミリ波のような高周波数の場合、より効率的な通信をするためには、信号減衰を抑制するために低誘電正接の材料を使用する必要がある。そこで、低誘電正接を特長とするLTCC用材料を開発した。
低誘電率タイプのMLS-23は、伝送損失、遅延速度の低減に寄与し、インダクタ、モジュール基板に最適な材料である。比誘電率は28GHz、40GHzともに3.8。高膨張タイプのMLS-51は、9.7ppm/℃と樹脂基板に近い熱膨張係数を持ち、接合時の信頼性が向上することを特徴としている。高強度タイプのMLS-63は、400MPaと業界最高の曲げ強度を持ち、基板を薄型化できる。
いずれも誘電正接は、従来材料の1/4~1/2に抑えられ、信号減衰の低減に寄与する。これらの製品は、より高い周波数を利用するミリ波レーダー部品や60GHz帯WiFiにも有効だという。