東大、ミリ波・テラヘルツ波の新しい磁気記録方式「集光型ミリ波アシスト磁気記録」の原理検証に成功

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東京大学は10月8日、ミリ波を用いた新しい磁気記録の方式として、「集光型ミリ波アシスト磁気記録(Focused Millimeter Wave-Assisted Magnetic Recording:F-MIMR)」という記録方式の原理検証に成功したと発表した。

ビッグデータとIoTの時代において、持続可能なデータストレージシステムとしてミリ波磁気記録が大きな役割を果たすことが期待されている。指数関数的に増大を続けているデータ量に対し、磁気記録容量を向上させるためには、磁性粒子のサイズを小さくする必要がある。磁性粒子が小さくなると磁化の熱不安定性が増す問題が発生する。この超常磁性問題の回避には磁性体の磁気異方性を大きくする必要がある。磁気異方性を大きくすると、今度は磁気記録ヘッドでの磁場書き込みができなくなるという問題が生じる。この問題は磁気記録トリレンマと呼ばれるが、その解決のために熱アシスト磁気記録やマイクロ波アシスト磁気記録などが提案されている。

研究では、1)無磁場共鳴(自然共鳴)により、金属置換量に応じて35~222GHzの広い周波数領域でBeyond 5G用途で期待される高周波ミリ波を吸収すること、2)シングルナノメートルサイズ(8nm程度)まで小さくしても強磁性を維持できることを理由に、イプシロン酸化鉄(ε-Fe2O3)に着目。金属置換型イプシロン酸化鉄からなる磁性フィルムを作製し、ミリ波磁気記録という新しいコンセプトに立脚して、集光型ミリ波アシスト磁気記録を提案した。

検証実験では、ガリウムーチタンーコバルト置換型イプシロン酸化鉄 (GTC型ε酸化鉄)ナノ粒子を、ガラス基板上に塗布した磁性フィルムを用いた。また、テラヘルツ波を光源とした高強度のミリ波発生装置を開発するとともに、GTC型ε酸化鉄の共鳴周波数に相当するミリ波を集光させるための金属製のミリ波集光リングを電磁界解析シミュレーションによって設計し、磁性フィルムの表面に作製した。フィルムの磁化方向をフィルム面外の+z方向にそろえ、-z方向に保磁力4.9kOeよりやや小さい外部磁場(3.4kOe)を印加した状態で、集光ミリ波を照射した。

照射後の試料を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、金属リングの高さ形状が観測されるとともに、磁気力顕微鏡(MFM)では、集光リングの周辺に暗いコントラスト部分が観察された。MFM画像の色コントラストと電磁界シミュレーションの磁場分布マップを比較すると、観測されたMFM画像と磁場分布は良く一致しており、高強度ミリ波磁場により磁化反転が生じたことが判明した。

また、もう一つの検証実験として、シリコンウエハーの上にミリ波集光リングを作製し、磁性フィルムと重ね合わせた状態で、テラヘルツ波を照射したところ、磁性フィルム上のリング周辺の最もミリ波集光度が高い部分に磁化反転が観測された。

F-MIMRの時間発展スピンダイナミクスを理解するため、ナノ粒子内の全てのスピンの動きを考慮した確率的ランダウ・リフシッツ・ギルバート理論モデルを用いて計算機シミュレーションを行った結果、共鳴周波数のミリ波が照射されると、瞬時に磁化が反転することが示唆された。

ミリ波磁気記録技術は磁気記録トリレンマ問題を解決し、磁性粒子のサイズを小さくして、記録容量を増加させることが期待できる。ミリ波の遷移エネルギーは可視光の遷移エネルギーの約1/5000であるため、光加熱効果の影響を避けることができる。そのため、有機樹脂をベースフィルムとする磁気テープにとって、ミリ波磁気記録は極めて有効な記録方式になるという。

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