- 2019-8-7
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- スーパーコンピューター, チューリッヒ工科大学, マックスプランク, 光パルス, 光吸収特性, 研究, 筑波大学
筑波大学は2019年8月6日、同大学計算化学研究センター、マックスプランク物質構造ダイナミクス研究所、チューリッヒ工科大学の共同研究グループが、パルス光が遷移金属薄膜に引き起こすアト秒(10の18乗分の1秒)時間スケールの超高速な光吸収特性の変化を測定することに成功したと発表した。加えて、スーパーコンピュータを用いた第一原理計算により、測定された超高速な光吸収特性変化が、電子が物質内で空間的に局在することに起因していることを明らかにした。
研究グループは今回、2つの光パルスを厚み50〜100nmのチタン薄膜、及びジルコニウム薄膜に照射する実験を行った。1つ目の光パルスは赤外光からなる数フェムト秒(10の15乗分の1)の時間幅を持ち、遷移金属資料を励起する役割を持つ。また、2つ目の光パルスは極端紫外光からなる数百アト秒の時間幅を持ち、1つ目の光パルスで励起された試料の光吸収特性を、アト秒の時間分解能で測定するために用いられている。実験の結果、赤外光パルスを照射された遷移金属試料の光吸収特性がアト秒の時間スケールで変化していることが分かった。
さらに、遷移金属の超高速な光吸収特性変化の起源を明らかにするために、スーパーコンピュータを用いた第一原理シミュレーションにより、赤外光がチタン試料内部に引き起こす電子の運動を詳細に調べた。その結果、実験で観測された超高速な光吸収特性変化は、光によって電子が遷移金属原子の周りに局在化していることや、物質内部での微視的な遮蔽効果の変化に起因していることが判明した。
この研究により、光パルスによって遷移金属内部での電子の局在性を増強することで、物質の光学的な性質を超高速に変化させられることが分かった。ここで得られた知見は、光によって物質中の電子の運動を超高速制御するための基盤となるもので、さまざまな物質の性質を超高速に光制御するための重要な一歩となる成果だという。