イカの歯がヒントに――タンパク質を使った2Dマテリアルの精密積層方法を発見

ペンシルベニア州立大学の学際的研究チームが、酸化グラフェンなどのような二次元物質のレイヤーを高精度で自在に積層する方法を見出した。その結果、柔軟な電子デバイスやエネルギー貯蔵システム、機械的なアクチュエーターなど、レイヤー間の距離を精密に制御したハイブリッド材料を構築できると期待される。研究成果は『Carbon』誌7月号にて公開されている。

単分子厚さの酸化グラフェン・シートと、イカの吸盤にヒントを得た合成タンデムリピートタンパク質の混合溶液。タンデムリピートタンパク質が酸化グラフェン・シートの端部に付着して、グラフェンを均一に積層する。

酸化グラフェンは、平面状に結合している2Dマテリアルだ。シートの長さや幅は変えることができるが、厚さは1分子の高さしかない。これを実用的な材料にするには、同じ材料あるいは異なる成分を含むシートを何層にも三次元的に積層する必要がある。

研究チームの機械科学工学科教授のMelik C. Demirel氏は、「化学蒸着(CVD)法を使用する2Dマテリアルの積層プロセスは高コストで、時間もかかる。また、スケールアップも難しい」と、現状の課題を説明する。

研究チームは、着目したのは「イカの吸盤にある環歯」だ。この環歯を形成する遺伝子配列が繰り返すタンデムリピートタンパク質にヒントを得て、タンパク質を使って2Dマテリアルを自動的かつ精密に積層する方法を編み出した。

研究チームが用いた酸化グラフェンのシートとタンデムリピートタンパク質の合成ポリマーの混合溶液において、タンパク質ポリマーの一端が酸化グラフェンのシートの端部に付着し、もう一端が別の酸化グラフェンのシートの端部に付着してシートを結合するように機能する。これを繰り返すことで、酸化グラフェンのシートは自己集積し積層されていく。しかもシート間の距離は、タンデムリピートタンパク質の分子量によって調整できるという。

Demirel教授は、「これまでは複合材料レイヤーを1nm以下で積層することはできなかったが、今回発見した手法ではタンパク質の分子量を選定することで0.4/0.6/0.9nmという原子レベルの微小間隔で積層することができる。異なるシートを積層していくことも可能だ」と、その成果を説明する。

研究チームは開発技術を利用して、バイモルフ型アクチュエーターを試作した。その研究報告の中で、「この新しい分子複合材料から成るアクチュエーターは、約2Vの電圧で容易に駆動でき、バルク材料を用いた従来のアクチュエーターに比べてエネルギー効率が18倍も高い」とし、さらに分子量の大きなタンパク質を使えば、より大きな変位量を達成できるとしている。

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2D layered devices can self-assemble with precision

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