光波を測る量子暗号のセキュリティ問題を解決――どんな盗聴技術でも破れないことを証明 東京大学

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東京大学工学部は2021年1月14日、同大学大学院工学系研究科附属光量子科学研究センターの小芦雅斗教授らの研究グループが、光波を測る量子暗号方式のセキュリティの問題を解決したと発表した。非現実的な仮定を置くことなく、保証されたセキュリティのもとで通信する具体的な方法を初めて見出したという。

量子暗号は、量子力学の性質を利用して、盗聴者の計算能力や技術レベルに依存しない強固なセキュリティを持った通信を可能にする技術だ。多くの量子暗号方式では、非常に小さなエネルギーを持つ光子1個の到来を検知できる光子検出器が使われるが、光の波の振幅を測る量子暗号方式も提案されている。この方法には、光子検出器を使わずに、もっと安価な強い光のエネルギーを測る光検出器で量子暗号を実現できるという利点がある。しかし、光子の検出を行う方法に比べてセキュリティを保証する理論の進展が遅く、盗聴者がどんな技術を使っても盗聴できないという量子暗号の最大の特長を証明するために非現実的な装置の仮定が必要だった。

研究グループは今回、未解決だった連続量量子鍵配送のセキュリティの問題を解決した。「この手続きに従って信号処理を行えば、どんな盗聴技術でも事実上破れない」という証明に成功したという。

連続量量子鍵配送の理論的な難しさの原因は、受信者のホモダイン検波の測定結果がアナログ量であることだ。例えば光の波の振幅の測定結果が0.874だったり、1.3929だったりと測定のたびに千差万別の数字が出てくる。一方、光子検出器の測定結果は、光子が到着したか、しなかったかの2種類しかなく、この違いが盗聴の痕跡を調べようとする際に大きく関わってくる。

これまでに提案されてきた手法の場合、盗聴の度合いは、「通信を無限に長い時間続けたら」「光の波の振幅の測定を無限の精度で実現できたら」など、実現できない仮定のもとでしか厳密に知ることができなかった。

今回、問題解決の鍵となったのは、ラゲールの陪多項式という数学の道具を使ったある公式の発見だ。波の振幅というアナログ量から盗聴の痕跡を突き止める新しい手法の考案により、従来型の量子暗号のセキュリティ理論のテクニックをそのまま使うことができ、非現実的な仮定を一切せずに、「どんな盗聴技術でも事実上破れない」ことの証明に初めて成功したという。

この研究成果は、量子暗号装置の低コスト化やコンパクト化、光波長多重通信による大容量化の道を開き、量子暗号技術の普及を促進することが期待できる。

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