1つの電子チップで人間の脳のような機能を提供するAI技術を開発――光を動力源とし、スタンドアロンで動作

光を動力源とする電子チップ1つに、画像処理、プロセッシング、機械学習、メモリを統合する人工知能(AI)技術が開発された。この研究は、豪RMIT大学が主導して、米コロラド州立大学、中国の東北師範大学、米カリフォルニア大学バークレー校と共同で行ったもので、研究結果は2020年11月17日付で『Advanced Materials』に掲載された。

通常、AIはソフトウェアとオフサイトのデータ処理に大きく依存している。それに対し、今回開発された新しいプロトタイプは、オンサイトで迅速な意思決定ができるようにするため、電子機器とインテリジェンスを統合することを目指している。

今回の研究では、人間の脳が視覚情報を処理する方法を模倣してAI技術を縮小し、その結果、AI駆動に必要なコアソフトウェアと画像キャプチャハードウェアを単一の電子デバイスに統合することができた。

RMIT大学の研究チームは、光を使用してメモリを作製/修正するプロトタイプチップを以前にも開発している。今回はそのチップをベースにしており、新しく組み込んだ機能によって、チップが画像を取り込んで自動的に強調したり、数値を分類したりできるようになり、トレーニングして90%を超える精度でパターンと画像を認識できるようになった。

複数のコンポーネントと機能を1つのチップにまとめることで、AI主導の自律的な意思決定において、これまでにないレベルの効率性と速度が実現可能になった。今回開発されたデバイスは、将来的には無理なく統合できるよう、既存の電子機器やシリコン技術とも互換性がある。

今回の仕組みは、オプトジェネティクス(光遺伝学)にインスパイアされたものだ。オプトジェネティクスとは、身体の電気システムを極めて正確に精査し、光を使用してニューロンを操作できるようにするというバイオテクノロジー分野で新しく出てきた手法だ。今回のAIチップでは、さまざまな波長の光に応じて電気抵抗を変化させる極薄の黒リンが素材として使用されている。画像処理やメモリ保持などさまざまな機能は、チップ上に異なる色の光を当てることで実現している。

研究論文の筆頭著者であるTaimur Ahmed博士によると、光ベースコンピューティングは、既存の技術よりも高速かつ正確でありながら、必要なエネルギーがはるかに少ないという。

今後、さらなる開発により、この光駆動のプロトタイプは、ドローンやロボットのようなよりスマートで小型化した自律技術や、人工網膜のような生体工学的インプラントやスマートウェアラブルを実現可能にする可能性がある。例えば、人工網膜と共にこのチップを使用すると、人工網膜を小型化し、バイオニック・アイの精度を向上させることができる。

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