東北大学は2021年3月9日、同大学多元物質科学研究所の研究グループがpnホモ接合の硫化スズ太陽電池を作製し、高い開放電圧の取り出しに成功したと発表した。
硫化スズは希少金属や有害元素を一切含まないため、クリーンな次世代ソーラーパネル材料としての実用化が期待されている。高効率な発電には、同じ硫化スズでp型とn型を組み合わせたpnホモ接合を作製し、発電効率の向上を妨げる欠陥を減らす必要がある。しかし、p型に比べてn型の硫化スズは容易に作製できないことが課題となっていた。
同研究グループは2020年8月にn型硫化スズ単結晶の大型化に成功しており、10mmを超えるn型単結晶を容易に作製できるようになった。今回このn型単結晶の上にスパッタリング法によりp型の硫化スズを成膜することで、pnホモ接合の硫化スズ太陽電池の作製に成功した(冒頭の画像)。同発表によると、世界初の成果だという。
また、成膜条件に全く改良を加えていない試作品を用いて、360mVの開放電圧の取り出しに成功した。同発表によると、これまでのpnヘテロ接合の硫化スズ太陽電池でのチャンピオンデータに匹敵する高い数値だという。
一方で、これまでのヘテロ接合素子における変換効率の最高値が同発表によると5%であるのに対し、今回の試作品は1.4%に留まっている。ただし、大型のn型単結晶を用いているため1つの単結晶基板上に多数のp型層を成膜でき、pnホモ接合を最適化できることから、今後高い変換効率の実現が期待される。
同研究グループは、米・国立再生可能エネルギー研究所とも連携して開発を進めることで、次世代ソーラーパネル材料としての実用化に向けてさらなる開発を進める。