CERNの研究チーム、新たなテトラクォークを発見

2個のチャームクォークおよび反アップクォークと反ダウンクォークから構成される異種ハドロン粒子が発見された。 Image: CERN

CERN(欧州原子核研究機構)の研究チームが、2個のクォークと2個の反クォークから構成される、新しい異種ハドロンを発見した。「Tcc+」と名付けられた新しい粒子は、崩壊に伴って生成する粒子の実験的検出が容易であることから、クォーク素粒子の質量や量子数の精度向上や、従来の理論モデルの検証など、素粒子研究の新しい展開を可能にすると期待される。研究成果が、2021年7月26日から開催された欧州物理学会の「高エネルギー物理に関するオンライン会議(EPS-HEP 2021)」において報告されている。

全ての物質は、原子核と電子から成る原子から成り立っており、原子核は陽子と中性子から構成される。そして陽子と中性子も幾つかのクォーク素粒子の結合「ハドロン」の一種だ。通常、ハドロンには、3個のクォークから構成される陽子や中性子などの「バリオン」、クォークと反クォークの対で構成される「メソン」があるが、近年4個または5個のクォークが結合する粒子、いわゆる「異種ハドロン」が幾つか発見されている。また、これまでの研究によって、クォークには、アップ(u)、ダウン(d)、チャーム(c)、ストレンジ(s)、トップ(t)、ボトム(b)の6種類のクォークが存在することが判っている。

CERNのLHCb(Large Hadron Collider beauty)研究チームは、このほど2個のcクォーク、反uクォークと反dクォークから構成される異種ハドロンTcc+粒子を発見した。これまでにも2個のcクォークと2個の反cクォークから構成されるような「テトラクォーク」が発見されているが、2個のcクォークと釣り合う反cクォークを含まないテトラクォークの発見は初めてだ。

互いに釣り合うcクォークと反cクォークを同時に有する粒子のチャーム量子数は、合計でゼロになるが、Tcc+粒子のチャーム量子数は合計で2になり、「オープンチャーム」と呼ばれる特徴を有する。また、2個の重いクォークと2個の軽い反クォークを持つTcc+粒子は、各々1個ずつのクォークと反クォークから形成される2対のメソンに崩壊するが、このような場合、崩壊に至るまでの寿命が長くなることが理論的に予測されており、Tcc+粒子はこれまで発見された異種ハドロンの中で最も長寿命であることが判った。

Tcc+粒子は、それが崩壊してできる全ての粒子の検出が比較的容易であり、質量に関する精度を高度化でき、チャーム量子数の研究が可能になる。またこれまで観察されたものよりも数桁も長寿命の異種ハドロンの発見、従来の理論モデルの検証など、これまでは実現し得なかったクォーク素粒子の新たな研究分野を切り拓くと期待される。

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Twice the charm: long-lived exotic particle discovered

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