特定疾患の視力を回復――埋め込み型人工視覚システムが動物実験を完了

近い将来、特定の疾患による視覚障害を持つ人々は、人工視覚デバイスのインプラントで視力を回復できるかもしれない。シドニー大学とニューサウスウェールズ大学の研究チームは、網膜色素変性症などの患者の視力回復を目的とした埋め込み型人工視覚システム「Phoenix99 Bionic Eye」を開発し、動物実験による生体適合性を確認した。研究の詳細は、『Biomaterials』誌の2021年279巻で公開されている。

Phoenix99 Bionic Eyeは、メガネに取り付けた小型カメラ、眼球に埋め込む刺激モジュール、耳の後ろに皮下に埋め込む通信モジュールで構成されており、網膜の神経を刺激することで機能する。

小型カメラで撮影された映像情報は無線信号に変換されて通信モジュールに送られ、さらに通信モジュール内で電気信号に変換されて網膜の刺激モジュールに伝えられる。電気信号が神経細胞を刺激することで、脳にメッセージを送り、脳はその刺激を視覚として解釈するという仕組みだ。

網膜色素変性症は網膜の視細胞に異常をきたす遺伝性疾患だ。網膜は光を信号に変えて脳に映像として伝える働きをしているため、網膜色素変性症では視覚を得るための最初のステップが妨げられている。しかしそれ以降の視覚経路には問題がないため、Phoenix99 Bionic Eyeが最初のステップを代替し、残りの視覚経路に刺激を与えるように設計されている。

今回の研究では、羊モデルを用いて3カ月間の生体適合性を評価した。その結果、埋め込んだデバイスの周辺組織への影響は想定内のもので、何年間も安全に使用できると推測された。研究チームは、ヒトの臨床試験へ向けて良い結果であったと述べている。

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