- 2023-4-7
- 化学・素材系, 技術ニュース
- グラフェン, コロイド水溶液, ナノシート, 二次元物質, 名古屋大学, 名古屋大学大学未来材料・システム研究所, 研究, 稠密配列膜, 窒化ホウ素, 自動ピペット, 酸化物, 高速薄膜作製法
名古屋大学大学未来材料・システム研究所の長田 実教授らの研究グループは2023年4月6日、1分程度の短時間で、酸化物、グラフェン、窒化ホウ素などの二次元物質(ナノシート)を基板上に隙間なく配列し、薄膜を作製する新技術「高速薄膜作製法」を発表した。高品質なナノシート膜を溶液1滴、1分で自動製膜できる。
エレクトロニクス、エネルギー分野での応用が期待されているナノシートは、優れた機能を最大限に引き出してデバイス化するために、さまざまな基板表面にナノシートを稠密配列し、薄膜を作製することが重要になる。しかし、これまでのプロセスでは、1層の製膜に1時間程度を要するため、簡便かつ短時間で製膜できる方法が求められていた。
研究では、酸化物、グラフェン、窒化ホウ素などのナノシートのコロイド水溶液を自動ピペットで基板に1滴滴下し、それを吸引する という簡便な操作で、隙間なく稠密にナノシート同士が配列し、約1分で稠密配列単層膜の自動製膜に成功した。
この自動製膜による最適製膜条件、製膜機構を検討したところ、エタノールを1~2%添加した希薄コロイド水溶液(濃度0.02~0.05g/L)の利用が好適だとわかった。ナノシート間の重なり、隙間の発生が、コロイド水溶液の表面張力の低減とナノシートの対流促進で抑えられ、効率的に配列制御ができる。稠密配列単層膜作製の操作を繰り返すと、ナノシートの厚み単位で制御された多層膜のレイヤーバイレイヤーが構築できる。
開発した技術は、酸化物、グラフェン、窒化ホウ素など、さまざまな組成、構造のナノシートに適用できる。また、さまざまな形状、サイズ、材質の基材上に製膜できる。本技術は自動ピペットによる簡便な滴下、吸引操作が基盤であり、専門的な知識、技術なしで、4インチのウエハーサイズの大型製膜、少数ロットのオンデマンド自動製膜などがワンクリックでできる。
簡便、短時間、少量の溶液で、高品質稠密配列膜の大面積製膜を実現した今回の手法は、大幅に製造コストも削減できる。ナノシートの各種デバイスの工業的製造に向けた重要な技術に発展するものと期待される。
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