GEがプロップファンエンジン復活へ――シミュレーションに世界最大のスパコンを利用

米General Electric(GE)は、CFM RISEと協力して、従来のターボジェットエンジンに比べて燃費を20%向上させた超高効率「プロップファン」エンジンの開発を発表した。

プロップファンはオープンローターエンジンとも呼ばれる、二重反転プロペラ付きの航空機用エンジンだ。一般的にプロペラを回転させると、機体側に逆方向の回転力(カウンタートルク)が生じるため、何らかの対策を行わないと直進性が保てない。また、巡航速度とプロペラ回転速度の合成速度が音速を超えると、衝撃波による損失が増えるため、巡航速度は時速700km程度が限界とされる。

これに対し、二重反転プロペラは前後一対のプロペラが反対方向に回転するため、カウンタートルクの発生を抑えることができる。また、後段プロペラが前段が発生する回転気流を整流することで推進効率が高まる。さらに、プロペラの枚数が2倍になるため各プロペラの回転数を抑えることができ、衝撃波を抑えながら巡航速度を高めることが可能とされている。

プロップファン自体は新しい技術ではなく、1970年代に考案されたものだ。その後、1980年代にその設計は大きな進歩を遂げ、特に燃費性能は当時のジェットエンジンより30〜45%も良好だった。GEも1980年代に試作プロップファンエンジン「GE-36」を開発したが、石油価格の低下や、騒音、振動が大きいといった問題から、実用化は見送られた。

近年、燃料価格が大幅に上昇したことで、航空業界の推進効率に対する関心が再び高まっている。その結果、GEはSafran Aircraft Enginesと共同で、2021年に「RISE(Revolutionary Innovation for Sustainable Engines)」と呼ばれる新しい旅客機用エンジン開発プログラムを発表した。エンジンの性能と騒音レベルをモデル化するために、GE Aerospaceは、アメリカ・エネルギー省オークリッジ国立研究所の世界最速のスーパーコンピューター「フロンティア」上で動作する流体力学ソフトウェアを作成し、集中的にシミュレーションを繰り返している。また、チームはAirbusと提携し、2020年代半ばに飛行する予定のオープファン実証機を開発しており、GEはいくつかのプロトタイプを製作し、CFMは約400回の地上試験を実施している。

航空業界はここ数十年で燃費効率を大幅に向上させたが、RISEのプロップファンエンジンはさらに20%の効率化を目指す。過去に設計されたプロップファンは、過剰な騒音を発生させるという批判を受け、実用化に至らないものが多かったが、RISEの開発計画では最も厳しい騒音排出基準を満たすため、徹底的にテストされていると述べている。

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