電解液に水を使用した、安全でリサイクル可能なマグネシウムイオン電池の開発

Credit: Carelle Mulawa-Richards, RMIT University

オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は2024年2月22日、同大学の研究チームが、中国GrapheneXと産学連携し、電極間に流れる電解液に水を使用した、安全でリサイクル可能な水系マグネシウムイオン電池を開発したと発表した。同研究成果は2024年2月6日、『Advanced Materials』誌に掲載された。

広く普及しているリチウムイオン電池の有機電解液は揮発しやすく、可燃性であるため、安全性への懸念から、大規模なグリッドエネルギー貯蔵への使用は制限される。そこで研究チームは、電解液に水を使用した水系金属イオン電池に着目した。特にマグネシウムは自然界に豊富に存在し、安価で毒性も低いため、水系マグネシウムイオン電池は安全に分解でき、再利用やリサイクルも可能だ。

研究チームは、蓄電容量や寿命に関する同電池のさまざまな技術課題を克服するため、小規模な電池を試作した。試作電池にビスマスの保護層を設けると、金属の樹状結晶化を抑制できることを示した。そして、同電池は、市販のリチウムイオン電池の寿命に匹敵し、エネルギー密度も75Wh/kgを達成した。

さらに、研究チームは、ソーラーパネルの蓄電池として同電池を組み込み、再生可能エネルギーを効率的かつ安定して貯蔵できることを示した。安全面に配慮した同電池は、再生可能エネルギーのグリッド貯蔵システムなどへの利用が期待できる。

RMITのTianyi Ma教授は「水系マグネシウムイオン電池は、数年で鉛蓄電池を代替し、10年でリチウムイオン電池を代替する可能性があります。本技術が進歩すれば、家庭用や娯楽機器へ電力供給できる小規模エネルギー貯蔵アプリケーションも現実的になるでしょう」と説明した。研究チームは現在、エネルギー密度をさらに向上させるため、ナノ電極材料の開発に取り組んでいる。

関連情報

New water batteries stay cool under pressure – RMIT University

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