新しい材料を用いた熱電モジュールの高性能化に成功 NIMS

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は2024年10月23日、資源豊富で安価なMg3Sb2系の熱電材料に関して、性能を大幅に高性能化したと発表した。インジウム(In)ドーピングと焼結時間の制御により、電子伝導を大幅に向上させると同時に、効果的に熱輸送を遮蔽している。

熱電材料は、ゼーベック効果により固体素子で熱エネルギーを電気エネルギーに変換する材料だ。固体デバイスで廃熱を電気に直接変換できるため、カーボンニュートラルと持続可能な社会を実現するための技術として期待されている。

しかし、不十分な熱電性能と、材料の希少性や高コストにより、熱電技術の広範な応用が妨げられてきた。熱電性能指数zTの最大値が2.0に達する高性能熱電材料は、いずれも毒性、高コスト、希少性、安定性の低さなどの多くの欠点があり、商業的応用は非常に難しいと考えられている。

Mg3Sb2系の合金は、ビスマステルライド(Bi2Te3)系を置き換えることが期待されている熱電材料だ。Mg3Sb2系の合金の高性能化には、Mg3Sb2系の欠陥微細構造の複雑さが妨げとなっていたが、Inドーピングの導入と焼結時間の制御により構造無秩序を低減するとともに、フォノン散乱に相乗的に作用する微細構造を実現した。

構造的無秩序の減少により、電子の局在状態から非局在状態へ移行し、大きく電子輸送が促進される。さらに、再構築された欠陥微細構造は複数のひずみ変動を促進し、フォノン輸送はそれにより抑制される。

これらの効果で熱電性能が大幅に改善され、室温で約0.5、723Kで約2.0のzTを示した。これは、Mg3Sb2系の合金で報告された最高値となる。この結果、300~723Kの温度範囲で約1.36という最高の平均zTを達成した。また、作製した単素子モジュールは、425Kの温度差で約12.6%という最高の変換効率を達成した。

今回の成果は、希少な材料であるテルル(Te)をほとんど含まない、低価格かつ資源豊富で、広範囲に適用できる熱電モジュールの実用化を進めるものとなる。Society 5.0を実現するために必要な多数のセンサー用自立電源向けに加え、大きな省エネ効果に資する熱電モジュールの実用化につながることが期待される。

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NIMS発新材料を用いた熱電モジュールの超高性能化に成功 | NIMS

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