振動や騒音を抑制しつつ高い硬度を持つ新素材――自動車や航空宇宙分野への応用に期待

Image: Michel Büchel / ETH Zurich

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)の材料研究チームは2024年10月10日、高剛性でありながら高い減衰能力を持つという、一般的には相容れない2つの特性を併せ持つ複合材料を発表した。

振動は機械や建物の損傷の原因となり、騒音は人間の健康や福祉に影響を与えるため、剛性と耐荷重性に加えて、騒音を緩和する制振材料が必要とされている。従来のアプローチでは、発泡体、ゴム、スプリングやショックアブソーバーなどの減衰材料や部材を使用するため、製品の重量と寸法が増えて、価格も上昇することが多かった。

研究チームによると、剛性が高く耐荷重性に優れ、効果的な内部減衰機能を持つ素材に対する世界的な需要は高い。しかし、この2つの特性は通常、互いに相容れないため、このような材料を作ることは容易ではない。

ETHの研究チームは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)混合物を架橋する方法を採用した。極薄のゴムのような層で接続された、硬い材料の層からなる複合材料が形成され、2つの特性を兼ね備えた材料の開発に至った。

初期のプロトタイプでは、厚さ0.2~0.3mmのシリコンとガラスの板を、厚さわずか数百ナノメートルのゴムのような層でつないだ。さまざまなテストの結果、この複合材料が期待通りの特性を持つことが明らかになった。

研究チームは、複合材料の高い剛性と減衰を同時に実現するために必要な連結層の最適な厚みを、コンピューターモデルを用いて計算した。

計算の結果、この減衰ポリマー層は、材料全体の体積の1%未満、一方、硬質ガラスまたはシリコン層は、少なくとも99%を占める必要があった。ポリマー層が薄すぎると減衰効果はほとんどなく、厚すぎると十分な剛性が得られないことを明確にした。

硬質層にはスマートフォン用のガラス材を使用し、ポリマー層には化学反応性部位を含む市販のPDMSベースの混合物を使用した。触媒添加により両層が結合してポリマーネットワークを形成し、ゴムのようなポリマー層が2液性シーリングのように硬いプレートをつなぐという。

研究チームは、この複合材料を25cmの高さからテーブル上に落下させて、同サイズのガラス板と音響的/機械的減衰を比較した。その結果、複合材料は優れた減衰特性と安定性を示し、窓ガラスや機械の筐体、自動車部品、航空宇宙やセンサーなど、高度な制振材料の需要が高い分野にも応用可能だと判明した。さらに、ガラスとシリコンは簡単にリサイクルでき、溶かせば、ポリマーは分解するためリサイクルプロセスに影響しないという。

研究チームは2024年の初夏に特許を取得し、この発明を学術誌『Composites Part B: Engineering』に発表している。

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