- 2025-2-10
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Image credit: Nicole Smith, made with Midjourney
米ミシガン大学を中心とした共同研究チームが、金鉱床の形成過程を明らかにする新しい熱力学的モデルを開発した。硫黄を含む流体がプレートの沈み込みによって地球マントルに加わることで、マントル内部に閉じ込められている金がAuS3錯体として流体中に濃縮するとともに、マグマの噴出に伴い地表の火山帯に移動して金鉱床を形成するメカニズムを提案したものであり、圧力と温度を制御して人工的にマグマを再現した実験により実証した。
地球を構成する物質の含有率の観点で言えば、金は鉛よりも多く存在する比較的豊富な金属の1つであるが、その大部分は地球マントルの内部深くに閉じ込められている。太平洋を取り巻く火山帯にある火山岩または岩漿(がんしょう)に含有されている金は、地球マントルを起源とし、マグマによって地表に移動してきたものであることが知られているが、金がどのようにして地表にもたらされてきたかは論争のテーマとされてきた。研究チームは、圧力と温度を制御して人工的にマグマを再現した実験をもとに、数値計算による熱力学的モデルを用いて、マントルから地表に上昇するマグマへの金の濃縮メカニズムを明らかにすることに挑戦した。
研究チームは、活火山の下50~80kmにあり特定の圧力と温度の条件で存在する、特別な金と硫黄の錯体に注目した。硫黄(S)イオンと結合した金の錯体についてはさまざまな議論がされてきたが、中国やスイス、オーストラリア、フランスを含む研究チームは、数値計算モデルによって初めて、AuS3錯体が実際に存在し、金鉱床形成に重要な役割を果していると考える熱力学的モデルを提案した。
金は地球マントル内では不活性であり、そこに留まる傾向を示すが、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、硫黄を含む流体がマントルに加わる条件において、3個のSイオンと結合しAuS3錯体を形成する。さらに硫黄を含む流体中では、金がマントルにおける含有比率よりも1000倍も濃縮されることが明らかになった。濃縮された金属錯体は、プレート沈み込み帯においてマントルが溶融して形成されるマグマに含まれることで、極めて高い流動性を持ち地表の火山帯に移動する。マグマが地表に上昇すると、熱水の脱ガスおよび循環プロセスによって、金が岩石内部でさらに濃縮され、最終的に採掘可能な鉱床を形成することが、人工的にマグマを再現した実験により実証された。
「太平洋の周囲には、ニュージーランドから東南アジア、日本、ロシア、アメリカとカナダの西部、そしてチリに至るまで多くの活火山があり、プレート沈み込み帯に形成されている。金の鉱床を形成するプロセスは、火山噴火をもたらすプロセスと同じであり、豊富な金鉱床が形成されるメカニズムが明確になった。金鉱床の形成過程の理解が進み、今後の探査活動に有益な効果を与える」と研究チームは期待している。
研究成果は2004年12月19日に『National Academy of Sciences』に公開されている。