摩擦発生のメカニズムを分子レベルで解析――低摩擦特性材料の開発に向けた基礎研究

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サファイア球が銅試験片の平面上を移動して摩擦を起こすと、材料結晶中に不可逆的な変化が生じる。

ドイツのカールスルーエ工科大学(KIT)の研究チームが、摩擦を受ける物体の微細構造を解析し、接触面の直下で摩擦の初期段階から微細結晶組織の変化や表面酸化が生じていることを発見した。摩耗に起因するエネルギーや素材の損失を低減することは、各種ベアリングや人工股関節など、可動部品を使う幅広い分野において重要な課題だが、表面組織の制御を通じて摩耗の少ない材料の開発が可能になると期待される。2件の研究成果が、『Scripta Materialla』誌の2018年8月号に公開されている。

密着した物体に滑りや回転が生じる場合に起きる摩擦であるが、輸送分野において消費エネルギーの約30%は、摩擦に打ち勝つために使われている。また、摩擦によって起こる摩耗により、ドイツの国内総生産の1.2~1.7%に相当するコスト、即ち2017年では42.5~55.5ユーロを損失しているという。

「摩耗プロセスがどのように始まるか、どこで摩耗片が生成されるか、等の点は、これまで明らかにされてこなかった」と、材料力学科のPeter Gumbusch教授は語る。研究チームは独自の電子顕微鏡手法を用いて、摩擦している物体表面直下を直接観察することを試みた結果、摩耗に繋がる脆弱部の発生を確認することに成功した。実験では、サファイア球を銅試験片の平面上を直線移動させ、試験片に生じる結晶構造変化を高分解能電子顕微鏡を用いて観察した。

その結果、表面から150~200nmの深さの結晶中で、鮮明な線条痕が発生することを見出した。更に、これが不可逆的な変形である転位構造で、摩擦の最初のサイクルで生成することが判った。これが、摩耗片の発生に繋がる脆弱部の起点となっている。このように転位が表面直下で形成されることは、機械的応力分布を用いた数値解析によっても裏付けられた。

研究チームはまた、銅試験片を用いて、摩擦による表面酸化の状況を調べた。その結果、数回の摩擦サイクルの後、3~5nmの大きさのナノ結晶とアモルファス構造から構成される酸化銅クラスター層が生成されることを見出した。

Gumbusch教授は「これらの結果は、全く新規な発見で予想もしていなかった」とし、摩擦過程において分子レベルで生じているプロセスを理解することで、「今後摩擦特性を向上した材料を製造するための指針が得られる」と、その研究成果を説明している。

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