太陽光で廃プラスチックを燃料に変える――低コストで環境に優しい光触媒を開発

南洋理工大学(NTUシンガポール)は、太陽光を利用して、廃プラスチックを有用性の高い化学物質に変える手法を発明した。非生分解性のポリエチレンなども、ギ酸やギ酸メチルといった燃料や化学工業原料に作り変えることができるというもので、研究成果は2019年10月24日、『Advanced Science』誌に掲載された。

一般的なプラスチックは、非常に不活性な炭素―炭素結合を含んでいるため、非生分解性で、高温にしなければ容易に分解されない。これまでにも廃プラスチックを有用な化学物質に変えるアプローチはあったが、有毒な重金属のカドミウムを含む触媒などを使ったり、スケールアップするにはステップが多すぎるといった問題があった。

今回研究チームは、新たにバナジウムベースの光触媒を開発した。バナジウムは、一般的な車両用鋼板や航空機用アルミニウム合金に使われており、手頃な価格かつ生体適合性もある金属だ。白金やパラジウムなどの高価な金属を使った触媒とは異なり、低コストで、豊富にあり、環境に優しいという利点がある。この光触媒は、近くのアルコール基を捉え、太陽光のエネルギーを使用して、分子をジッパーのように分解、炭素―炭素結合を破壊する。

研究チームは実験で、プラスチックを溶媒中の触媒と混合したところ、溶媒内で85℃まで加熱することでプラスチックサンプルが溶解した。また、人工太陽光のもとでは、6日間でプラスチック内の炭素―炭素結合が破壊され、溶解したプラスチックをギ酸に変換することができた。ギ酸は、天然の防腐剤および抗菌剤であり、発電所や燃料電池でのエネルギー生成にも使用できる化学物質だ。

今回研究チームは、この新しい光触媒が30を超えるさまざまな化合物の炭素―炭素結合を破壊できることを示し、環境に優しい低コストの光触媒の概念を実証した。さらに、水素ガスなどの他の有用な化学燃料を製造できるよう、プロセスの改善も検討している。

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NTU Singapore scientists convert plastics into useful chemicals using sunlight

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