AIを利用した、がん生存期間計算機が登場

CREDIT: AMERICAN COLLEGE OF SURGEONS

米ノースウェスタン大学を中心とする共同研究チームが、がんと診断された患者の長期生存可能性を推定できる、人工知能（AI）ベースのがん生存期間計算機を開発した。同計算機は、乳がんと膵がん、甲状腺がんの5年生存期間を高い精度で予測した。

同研究成果は、2023年10月22～25日にボストンで開催されたAmerican College of Surgeons (ACS) Clinical Congress 2023で発表された。

現在、がん患者の推定生存期間は、主にがんの病期によって決められている。ノースウェスタン大学のLauren Janczewski医学博士は、「がん患者の生存に影響を及ぼす可能性のある要因は他にも数多くあります。われわれは、がんの予後について患者が予期できるよう、個別化した推定値を提供する、がん生存期間計算機を開発しました」と説明した。

研究チームは、全米がんデータベース（NCDB）に記録されている、2015～2017年に診断された乳がん患者約26万人と、膵がんと甲状腺がん患者それぞれ約8万人のデータを収集した。そして、症例と生存期間のパターンを学習させるため、収集データの4分の3を機械学習の訓練データに用いた。NCDBには、アメリカで新たにがんと診断された症例の72％が記録されるようになっている。

分析の結果、患者特有の生存期間への上位因子に、患者のがん手術の有無や診断時の年齢、腫瘍の大きさ、治療までの期間などが挙げられた。訓練した計算機を用いて、推定生存期間の汎化性能を評価したところ、実際の3つのがん生存期間に対して9～10カ月以内に収まる高い精度を示した。また、同計算機には、以前の方法には考慮されていなかった、患者の予後への影響が期待される特定の腫瘍バイオマーカーや治療因子も考慮されている。

研究チームは今後、臨床現場で医療従事者が同計算機を利用できるようなユーザーインターフェースを完成させ、最終的にはNCDBに含まれる他の全部位のがんを追加する予定だ。

AIを利用した、がん生存期間計算機が登場