1Vの電気で車を持ち上げる――電気化学的浸透圧を使ったハイドロゲルを開発

Photo: David Callahan

ハイドロゲルは、視力矯正から医療の飛躍的進歩まで、私たちの日常生活を向上させる原動力となっている。おむつやパーソナルケア用品などの衛生用品も、ハイドロゲル技術の恩恵を受けている。

スウェーデン王立工科大学(KTH)の研究者が開発した、レンガを割るミニロボット用筋肉は、1V以下の電気インパルスで制御され、必要に応じて形を変えたり、伸縮したりできる。この素材は、木材由来のセルロースナノファイバーで作られており、医療や生化学的生産における可能性も示している。

この成果は、KTHの研究者らによって2023年7月14日付『Advanced Materials』誌に報告された。

研究チームは、加圧された空気や液体の力で膨張するロボット筋肉ではなく、電気に反応し、特定の方法で膨張する特殊なハイドロゲルを作った。1V以下の低電圧を加えると、水分子がハイドロゲルの中に入り込むことで、300%まで大きく伸びる。研究チームは、この発明を電気化学的浸透圧(electrochemical osmotic:ECO)ハイドロゲルと呼んでいる。このハイドロゲルは、セルロースナノファイバーとカーボンナノチューブという2つの材料からできている。

この素材の強度は、木目のようにナノファイバーが同じ方向に配向していることから、一軸方向に膨張し、高い圧力を発生させる。15×15cmの繊維で2トンの車を持ち上げることができるという。

この研究の共著者であるKTHのMax Hamedi教授は、このプロジェクトの着想は植物の成長方法から得たと言う。「植物の強さを考えてみてください。樹木は舗装道路を突き破って成長することができるのです」

今のところ、研究者たちは、マイクロ流体工学におけるバルブやスイッチのような小さなデバイスに限定して使用することを想定している。現状人工筋肉は薄いシート状なので、大型ロボットの人工筋肉としての用途には限界があるためだ。さらに将来を見据えると、水中ロボットへの応用も考えられる。ハイドロゲルは水圧で圧縮されないため、水深の深い場所でも使用できるという。また、この技術のもうひとつの利点は、比較的安価に製造できることだ。研究チームは引き続き、素材の最適化、電子筋肉の3Dプリント、商業利用のためのスケールアップ方法の研究を行っている。

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